読まずに死ねるか!

この本があったから、良い本に出会うことができました。

読まずに死ねるか!

「深夜プラス1」「脱出航路」「高い砦」「第五の騎手」「犬橇」「ゴーリキー・パーク」「逃れの街」……。 いつの間にか、いい本を見つける超能力を身につけてしまった日本冒険小説協会会長・内藤陳が、 読者のために損得抜きで選んだ面白本の絶対おススメ読書案内。
開口健、椎名誠との対談も収録。
解説・北方謙三

他に「読まずば2度死ね」「読まずに死ねるか!3」etc.
内藤 陳さんの紹介はとても素晴らしく、参考になりました。

三国志の紹介は名文です。

敬愛する読者諸氏よ、君はそう想わぬか。俺にとっては『女王陛下のユリシーズ号』も、 『深夜プラス1』も『鷲は舞い降りた』も、『オーパ!』もエェイ書けばきりが無いが、すべて一番好きな本なのだ。 何であの本あげてこの本あげずにいられるものかと高言したが、そ、その様に三顧の礼をつくされたのではもはやこれまで、 他の大傑作はこれを泣いて馬謖を斬り、万死覚悟でただ1冊を選ぶとすれば、
『三国志』吉川英治、講談社。

なんだ『三国志』か! など軽く言うことなかれ。この雄大な物語を読まずして君死にたもうことなかれ。
『三国志』こそが陳メ少年の頃よりも今もなおかつ五読、いや二十読しても感動いやます波瀾万丈、悲愁切々、 血湧き肉躍る壮大な歴史スペクタクル人間ドラマなのだ。

そして、本書にはあらゆる面白小説のドラマチックなメニューがとりそろえてある。
男の想いならば、玄徳と関羽・張飛。『三国志』の一番の主役と思える諸葛亮孔明の男の義の重さ。 曹操が(陳メには玄徳よりも人間的で好ましい)寄せる関羽への思い。

凄惨! 血が河を山を草を染める数かずの戦い。

玄徳を想い名馬赤兎馬を駆って五関を抜き千里を行く関羽の勇姿。

大敗戦の長坂橋に赤子を守り傷だらけの大奮戦! アア感動の我らが趙雲子竜。

武勇は当代一なれどチト節操に欠ける梟雄呂布の美女貂蝉による恋心とその哀れな最後。 肝をも拉ぐ豪傑・英雄割拠し、権謀術策嵐と乱れ、『積木くずし』なんざ不必要の親孝行のお話あり、美姫あり、涙あり。 と思えば一転遥か雲南(今のビルマ)に遠征した孔明が七度放った南蛮王孟獲との戦いの面白さ。etc ……。 とても短文では書き表すこと非才陳メには無理なのだ。それほどの物語に錦上花を添える、 イヤ、これなくしてはこの物語が有りえぬ“詩”の数かずの素晴らしさは正に燦めくばかり。

そして我はこの物語の華麗豪壮な文に酔いしれ、吉川バンザイと叫ぶのだ。

かてて加えて、痩肩良く蜀を担いながらも志半ばにして、秋風寥々五丈原に散った巨星諸葛亮孔明の血を吐くばかりの胸中を想うと。 アア! 陳メただ涙するのみ。そうさ、これが泣かずにいられるか。

孔明が心血をそそいだ出師の表の惨たる覚悟の誓いに、そして七歩の詩に!!

これこそが面白小説No.1なのだ。

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