日本冒険小説協会の懲りない面々による [ 高橋昌也、八角純二、藤枝博文、吉田真司 ]
パロディ版・冒険小説陳辞典
監修・内藤陳
- 安部譲二
- 日本のジョバンニ
- 明智小五郎
- 日本における保父さんの元祖。本職は探偵だが、事務所は常に保育園と化している。
- ジェフリー・アーチャー
- 小説を地で行く男。自分の小説そのままにイギリス議会にのりこんだにもかかわらず、自分の小説そのままに娼婦とのスキャンダルをまきおこす。ただし、自分の小説そのままの結末をむかえることがないであろう。
- アルゼンチン
- ナチの残党やネオ・ナチの地盤。年寄りを 捕らえてみれば ナチスかな。
- 犬
- 犬の登場する冒険小説もかなり多い。代表的な作品には『自由への逃亡』(フィゲロウア)、
『黄金の犬』(西村寿行)、『犬橇』(J・ジョバンニ)、『残酷なポチ』(ロバート・B・パーカー)などがある。
- ハモンド・イネス
- 生涯“ロスト・ワールドもの”を書けなかった作家。
- 印税
- 日本冒険小説協会のツアー資金。人は彼らのことを“印税ジョーンズ”と呼ぶ。最近では南フランスにアークを捜しに行った。
- ウィンブルドン
- テニス・プレイヤーが凶悪犯罪に巻き込まれる青春サスペンス小説の傑作。作者はラッセル・ブラッドン。他の著書に『ラドン』『日本の首領(ドン)』『番頭はんと丁稚どん』などがある。
- ネロ・ウルフ
- 食うか、しゃべるか、どっちかにしろ!
- S&W(えすあんどだぶりゅー)
- 米国の銃器メーカー。但し、ここでは44マグナムとチーフスペシャルという2種類の拳銃しか作っていないらしい。
- MIA(ミッシング・イン・アドレス)
- 住所不定者のこと。冒険小説協会の会員で転居先不明のため会報が返送されてきた人はすぐこのMIAリストに入れられ、普通はそのまま抹籍になる。捜索救出隊などは、ない。
- M-16
- 「ウィンチェスターは西部を勝ちとったが、M-16はベトナムを失った」と評判のコルト社製アサルト・ライフル。
- エルアラメン
- 日本蕎麦店「砂場」のきつねそば。ロンメル将軍が食べたがった。
- オリ
- 北方謙索(ゾウ)の発表した麻雀小説。他に『逃れの待ち』『テンパイはるかなり』『あがりなき夜』『トップには、遠すぎる』がある。
- 怪人二十面相
- ある時は隅田川の奥に潜み、ある時は不気味なファッションで気球を乗りまわす。帝都を震撼させるためには何でもやるという芸人。保育園児が嫌いである。戦前版多羅尾伴内。
- スティーヴン・キング
- 『木槍(キャリー)』でデビューして以来、日本をテーマとした小説を書き続けているベストセラー作家。代表作に『苦情(クージョ)』『栗捨(クリス)てん』などがあるが、でたらめの日本ばかりを書いたために、“キング・オブ・法螺(ホラ)”と呼ばれている。
- グラント
- 魚料理に赤ワインが合うことを欧米に紹介したスメルシュの殺し屋。
- グランドマスター
- 数百年も生き続けている甲子園球場整備員の親方さん。
- コルト
- アメリカの銃器メーカー、またはメーカー製の銃の名称。
- 銃の名前が分からなくても、これを書けば読者に納得してもらえるという、メカ音痴作家のための免罪符(→S&W)。
- にっかつが日活だった頃の名銃。
- 酒場
- バー『ゾウハー』は、一般に知名度は低いが、必ず満足させてくれる酒場である。
- さよなら
- 少しの間だけ死ぬための呪文。
- さらば
- 「女性」または「友人」の枕詞。ただし、現在では例外も多数存在し、伝統が失われつつある。
- サン・クエンティン
- アメリカの警戒厳重な刑務所。今では使われていないアルカトラズよりマイナーである。
- 三題噺
- 次の三つの語句を使って話を作れ。 1:雨・牧師・IRA 2:薄幸な少女・殺し屋・教会 3:オルガン・ジェイムスン・墓地
- サンテ監獄
- フランスの作家養成所。ジョゼ・ジョバンニが卒業した。内職に目薬も売っている。
- 地獄島の要塞
- タイトルは派手な活劇に見えるがヒギンズ版『愛と死をみつめて』。
- シトロエン
- フランスの国民車。フォルクスワーゲンが「カブト虫」と呼ばれるのに対して「油虫」と呼ばれる。おもにリボンを付けて走る。
- ジョン・シャフト
- ハードボイルド界の“ジャッキー・ロビンソン”と呼ばれる黒人の探偵。
- 女王陛下
- 一般に英国女王を指す。しかし、この女性に見込まれた軍艦もスパイも騎手もロクな目に遭ったためしが無い。
- 女王陛下のユリシーズ号
- 故アリステア・マクリーンの代表作。この比類なき名作は永遠に読み継がれてゆくであろう。
ちなみに、第二次大戦中に従軍していた慰安婦レミングさんは、この小説に影響をうけ『女王陛下の007号』『私を愛した女王陛下』を書き上げた、という逸話は有名。
- 食事
- スペンサーにとっては趣味、ネロ・ウルフにとっては人生そのもの、内藤陳には不要なもの。
- ジョゼ・ジョバンニ
- フランスの安部譲二。
- 深夜プラス1
- 1:ギャビン・ライアルの小説。彼はこの小説を左手で書いたといわれている。右手はいつどんなときでも酒が飲めるように空けてあるのだ。 2:新宿ゴールデン街にある酒場の名。
- マット・スカダー
- 自信のないバスケの選手。
- セントラル・パーク
- アメリカ大陸横断マラソンのゴールが突如、ベトナム帰りの兵士によって占領されたことで有名なニューヨークの公園。
- タイタニック
- 上げたり下げたり、浮き沈みの激しい船。金をかけた割には、ニューヨークまでたどりつけなかった軟弱な豪華客船。
- 大統領
- 一般にアメリカ合衆国の大統領を指す。冒険小説の中では最もヒーローの一人でもある。なんといっても数々のヒーローのパトロンなのだから!
- タイトル
- 『読ませて死なせて』『読まなきゃ死んじゃう』『読ま死ね三度笠』『日本一の読ま死ね男』
『読ま死ね対ゴジラ』『陳は舞い降りた』『読者(とも)を選ばば書を読みて』『陳メ死すとも面白本は死せず!』『読者の顔も三度まで』などなど。あー、難しい。
- 第二次世界大戦
- この戦争のおかげで、数知れぬ冒険小説の名作が生まれた。きわめて有意義な戦争であったといえよう。
- 高く危険な道
- 美人で、金持ちで、飛行機の操縦ができて、しあわせに暮らしました。だから、女性読者に嫌われるのだ。
- ダコタ(DC-3)
- ダグラス航空機会社が三番目に製作した商用機。第二次大戦中は軍用機としても使われた(C-47)。映画『カサブランカ』のラストシーンをはじめ、森詠『さらばアフリカの女王』、ヒギンズ『鷲は舞い降りた』、ライアル『ちがった空』などにより多数のファンがある。近年この扉の前でジョン・レノンが殺されまた有名になった。
- タンカー・ジャック
- 田中光二の『爆発の臨界』。かなり経ってから、フォーサイスの『悪魔の選択』『病院乗っ取り』
- チャンドラー
- タタラ島でレッドキングに倒されてあえない最後を遂げた怪獣。
- 朝鮮戦争
- この戦争からは、冒険小説の名作は生まれていない。あまり、意義のある戦争ではなかったと言えよう。
- リーアム・デヴリン
- 世界でもっとも長生きしているIRAのテロリスト。ギネスブック公認。
- デューセン・バーグ
- 一個一個手造りで、を売り物にして有名になったハンバーガーのチェーン店。ことに王侯貴族、ハリウッドの映画人(タミ)に好まれた。
- トウィンクル・トウィンクル・リトル・ドラマー・ガール・スパイ
- ジョン・ル・カレン・デイトンの代表作。
- ドジャース、ブルックリンに還る
- ノスタルジックな男の夢を描いた野球小説の傑作。姉妹篇に『ジャイアンツ、ニューヨークに還る』(巨人軍ではない)『ライオンズ、平和台に還る』『フライヤーズ、駒沢に還る』
- S・L・トンプスン
- 『D-51奪還チーム、出動せよ』の作者。蒸気機関車をテーマとしたシリーズを書いた。いつも同じ地域しか走らない。
- ナチス刈り
- 冒険小説ファンの好むヘアスタイル。その他に、魔獣刈り、幻詩刈り、獅子のい刈り、天使のい刈りなどのパターンがある。ちなみに内藤陳はアゴがトン刈り、体がガリ刈りである。
- ナチス・ドイツ
- KGBと並び、欧米の冒険小説には欠かせない永遠の敵役。『ブラジルから来た少年』『オデッサ・ファイル』『マラソン・マン』など、枚挙に暇がない。ナチの滝をスにかえたのはだれだ!
- ニンジャ
- イアン・フレミングが欧米に紹介した日本の特殊部隊の呼称。ここまでこの本をガマンした貴方。
- パーカー
- 悪党。
- ロバート・B・パーカー
- グチッポイ男。悪食。
- 八点鐘が鳴る時
- 明日のジョーは十点鐘。
- 万里の長城
- 本来は匈奴の侵入を阻止するために建築されたものだが、景山民夫がデューセン・バーグ専用のハイウェイにしてしまった。中国のアウトバーンという説もある。
- ジャック・ヒギンズ
- 別名ハリー・ワンパターソン。リメイクの天才。筆名を変えても、パターンは変わらず。二十年続けて貫禄にしてしまった人。
- ダーク・ピット
- 大多忙人。1988年にタイタニックを引き揚げるなり、即座にQD弾頭を回収し、
翌1989年にはマンハッタン特急を探したうえに大統領誘拐の謎まで追ってしまう。
- 一人だけの軍隊
- 映画『ランボー』(原題は“ファースト・ブラッド”)の原作。『怒りの脱出』は“セカンド・ブラッド”である。
- ファイアフォックス
- ソ連のミグ31戦闘機のコードネーム。燃料切れ言語健忘症ですぐにダウンしてしまうのが、ガンと言われている。
- フレデリック・フォーサイス
- 動物小説の専門家。主な作品に『ジャッカルの日』『戦争の犬たち』『シェパード』『オデッサ・カエル』『ライオンの核』『洗い熊の洗濯』などがある。
- ダン・フォーチューン
- マイクル・コリンズの『恐怖の掟』などに登場するチェルシーの探偵。「この腕、貸します!」で有名。
- 覆面作家
- マスクをかぶりながら小説を書く人のこと。『アイガー・サンクション』『シブミ』を書いたトレヴェニアン、『燃える男』『血の絆』を書いたクィネル、『虎面からの脱出』を書いた佐山聡などが有名。
- 船戸与一
- いま日本で一番アツイ作家。
- フライデー
- ロビンソン・クルーソーの従者にしてカメラマン。
- ディック・フランシス
- 代表作の競馬シリーズは、現在、『本命』から『侵入』まで24作翻訳されているが、どれも文句なしに面白い。『度胸』『愛嬌』『頓狂』『酔狂』『興奮』『暴走』『大穴』『中穴』『対抗』『飛越』『転倒』『利腕』『骨折』『生涯』『重傷』『借金』『奪回』『夜空』などがある。漢字のお勉強になる作家である。
- ブロック
- 映画『サイコ』の原作者。かつては恐怖小説を専門としていたが、近年、ハードボイルドに目覚め、『聖なる酒場の挽歌』などの傑作を生み出している。
- ブロフェルド
- 世界平和と整形手術とペルシャ猫をこよなく愛す慈善家。スペクターの会長。
- ベトナム戦争
- この戦争のおかげで、シルベスター・スタローンの『ランボー』が生まれた。彼にとっては有意義な戦争であったと言えよう。
- ホーク
- プロレスラー。相棒のアニマルと素顔の時は私立探偵もやる。得意技はボストンクラブ。
- マック・ボラン
- “電気の武者”(エレクトリック・ウォリアー)と呼ばれたT・レックスのマーク・ボランの弟。兄が死んだのはマフィアのせいだと逆うらみし、殺し回って歩く無法者。
- ジェームズ・ボンド
- 殺人許可証を持つ男。大英帝国と美食と漁色のためにそれを乱用する。猫は嫌いである、と思う。
- アリステア・マクリーン
- 『女王陛下のユリシーズ号』の作者。さっそうとデビューしたにもかかわらず、
途中から映画化を前提とした凡作を書き続けたため、アリステア・スクリーンの異名を持つ。
- マタズーレ暗殺集団
- R・ラドラム、初期の傑作。過去のあらゆる暗殺事件に関係しているらしい“マタズーレ”の
正体を追う主人公の活躍が描かれている。この謎の組織員は、みな股ずれができているので、
主人公は敵味方の判別のため男女かまわず服を脱がしてゆく。
- 摩天楼の身代金
- R・ジェサップ作、高層ビルにある焼肉店『摩天楼』で食い逃げを企てる犯罪小説。
ミノとシロが好物な若者に関する綿密な描写が話題になった。
- チャーリー・マフィン
- 消されかけ、再び消されかけ、呼び出され、そして、……され続ける男。
- ミロ
- 強い子である。ジェイムズ・クラムリーの創造した酔いどれ私立探偵ともいわれる。
- モサド
- イスラエルの情報機関。漢字で書けば猛者奴か猛者怒か。さてまた喪早奴か。
- モスクワ5000
- クレイグ・トーマスが編纂した、モスクワ在住五千種類の人名辞典。
- モーゼル
- ドイツの多角経営企業。農繁期にはワインを、閑な時には銃を作っている。
- 山猫の夏
- 東洋人はカイビリンガを飲みながらアーモンドを一口頬張ったが、すぐ、苦しそうに吐き出した。「虫食っている」ひび割れた声で言った。「やだね、このナッツ」
- 郵便配達は二度ベルを鳴らす
- 一度でよろしい。
- 横浜
- 日本のサンフランシスコ。小説の世界では、およそ何でも起こり得る無法地帯。似たようなイメージの神戸では、そんな事がないのは、町中で発砲するのが当然だからだろう。
- 酔っ払い
- アルコール中毒の状態を示す言葉。通常、この状態の人間は平常の人間よりも弱いはずなのだが、冒険小説においては必ず平常な人間よりも強い。
- ロバート・ラドラム
- 正体のわからない巨大な敵に立ち向かう孤立無援四面楚歌の主人公の苦悶をエンエンと描きつづけるベストセラー作家。代表作に『殺戮のオットセイ』『凶器のブサイク』などがある。
- ラッキー・ルチアーノ
- ギャングの親分。故郷シシリアにL判の錦のハンカチを飾った。
- 鷲は土地を所有した
- ジャック・ヒギンズの代表作“The Eagle Hsa Landed”をこう訳した人がいるらしい。ならば、映画の『スパイ・ライク・アス』は『スパイはお尻がお好き』、『ユア・アイズ・オンリィ』は『あんたの目玉だけ』となるのだろうか。
- ワルサー
- 善玉が使ってもワルサー。