さらば死都ウィーン
著作名
さらば死都ウィーン
著者
ダニエル・シルヴァ
ジャンル
冒険小説
星の数
★★★★
出版社
論創社
原作出版
2004
備考

デビュー以来、数々の話題作を発表しているダニエル・シルヴァ。『報復という名の芸術』に続き、ガブリエル・アロンの暗躍劇を描いた意欲作が登場。任務を帯びて赴いた街は、ガブリエルにとって禁忌ともいうべきウィーンだった。人類の負の遺産ホロコーストの真実を巡り展開される策略は、感傷と非情の狭間で、遂に実行に移された……。

訳者(山本光伸)あとがきより

主人公ガブリエル・アロンは、美術修復師という表の顔を持つ一方で、イスラエル諜報機関の元暗殺工作員として、現在もなお裏の世界で暗躍している人物である。ウィーンの<戦争犯罪調査事務所>が爆破され、彼がその事件の捜査に乗り出すところからこの物語は幕を開ける。事件は思わぬ方向に発展し、過去の別の事件と密接に絡んでいく。いかにもフィクション然とした筋書きだが、本書には、単なる創作作品として片付けられないリアリティがある。

アクツィオーン・1005に関する言及こそが、この作品にリアリティをもたらしている最たる要因だろう。アクツィオーン・1005とは、ナチスによって虐殺された人間たちの死体をこの世から消し去ることにより、ホロコーストの証拠を隠滅することを意図した秘密作戦だ。著者があとがきで触れているように、この作戦が行われたことが事実であるなら、それは、ホロコーストが現実に起こった紛れもない証拠である。

inserted by FC2 system