出生地
著作名
出生地
著者
ドン・リー
ジャンル
サスペンス
星の数
★★★
出版社
ハヤカワ文庫
原作出版
2004
備考
訳者あとがきより

あなたには、居場所がありますか?

以外に答えるのが難しい質問ではないだろうか。“居場所”とは、住居など、物理的な場所のことなのか。それとも、もっとメンタルな、心のよりどころとでも呼ぶべきものを指しているのか。あるいはそういったものではなく――たとえばアイデンティティといったような、全く別の次元のことが問われているのか。

この物語には、三人の主要登場人物の“居場所”探しの旅が描かれている。それは終着点にかならず答えが待っているとはかぎらない旅だ。

一人は、在日アメリカ大使館に駐在する、白人と韓国人のハーフの外交官、トム・ハーリー。軍人だった父について世界中を転々としながら子ども時代を過ごしたため、“誰に対しても、何に対しても、必要以上の愛着を抱いてはいけない。人であれものであれ、それと離れなければならなくなったとき、傷つくのは自分なのだから”――そんな後ろ向きな認識が染みついてしまっている。そしてそれゆえに、“居場所”を持つことを無意識のうちに自ら避けている。

二人めは、警視庁麻布警察署に勤務する刑事の太田健蔵だ。十四年前に離婚し、以来、恋人もなく一人で暮らしている。刑事課では、いわゆる窓際族だ。英語が少々話せるのが災いして、外国人がからんだつまらない事件は端から押しつけられる一方で、大きな事件の捜査には参加させてもらえず、さらに体質的に酒を受けつけないために“飲みニケーション”を通じて同僚刑事と連帯を深める機会から締め出されている。私生活でも職場でも、疎外感にとらわれている。

そして三人目は、リサ・カントリーマン。カリフォルニア大学バークリー校の大学院生で、博士論文のリサーチを目的に日本にやってきた。リサは日本人と黒人という組み合わせのハーフだが、白人と間違われがちな容貌をしている。その外見と実際とのギャップのために、マイノリティのコミュニティにも白人のコミュニティにも違和感を覚え、どこにも所属できない淋しさを振り払えずにいる。

このリサが東京で謎めいた失踪を遂げたとき、三人の運命が交差する。

リサの失踪の真相は――?

そして、三人がそれぞれ模索の末に見つけた“居場所”とは――?


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