風の影 風の影
著作名
風の影
著者
カルロス・ルイス・サフォン
ジャンル
冒険ミステリ
星の数
★★★★
出版社
集英社文庫
原作出版
2001
備考

1945年のバルセロナ。
霧深い夏の朝、ダニエル少年は父親に連れて行かれた「忘れられた本の墓場」で出遭った『風の影』に深く感動する。
謎の作家フリアン・カラックスの隠された過去の探求は、内戦に傷ついた都市の記憶を甦らせるとともに、愛と憎悪に満ちた物語の中で少年の精神を成長させる……。

謎の作家フリアン・カラックスの過去が明らかになるにつれて、ダニエルの身に危険が迫る。
一方、彼は作家の生涯と自分の現在との不思議な照応に気づいていくのだが……。
ガウディ、ミロ、ダリなど幾多の天才児たちを産んだカタルーニャの首都バルセロナの魂の奥深くを巡る冒険の行方には、思いがけない結末が待っている。
文学と読書愛好家への熱いオマージュを捧げる本格ミステリーロマン。

訳者あとがきより
「ここは神秘の場所なんだよ、ダニエル、聖域なんだ。おまえが見ている本の一冊一冊、一巻一巻に魂が宿っている。本を書いた人間の魂と、その本を読んで、その本と人生をともにしたり、それを夢みた人たちの魂だ。一冊の本が人の手から人の手にわたるたびに、そして誰かがページに目を走らせるたびに、その本の精神は育まれて、強くなっていくんだよ……どこかの図書館が閉鎖されたり、どこかの本屋が店じまいしたり、一冊の本が世間から忘れられてしまうと、わたしたちみたいにこの場所を知っている人間、つまりここを守る人間には、その本が確実にここに来るとわかるんだ。もう誰の記憶にもない本、時の流れとともに失われた本が、この場所では永遠に生きている。それで、いつの日か新しい読者の手に、新たな精神に行きつくのを待っているんだよ……」
十歳のダニエルにむけられた父センペーレの言葉、そして、ヌリア・モンフォルトの手記をしめくくる作家フリアン・カラックスの言葉のなかに、この小説にこめられた作者のメッセージが見える気がする。


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