ブラック・アイス
著作名
ブラック・アイス
著者
マイクル・コナリー
ジャンル
警察ミステリ
星の数
★★★
出版社
扶桑社ミステリー文庫
原作出版
1993
備考
海外ミステリ全カタログより

クリスマスの夜、自宅でコルトレーンのジャズを聞いていたハリウッド署殺人課刑事のハリー・ボッシュは、警察無線スキャナーでモーテルに刑事と思われる死体が発見されたことを知る。現場はハリーの所轄内だが、ハリー自身への出頭命令はなぜか出ていない。現場に急行したハリーは捜査に乗り出していたロサンゼルス市警の幹部、警視正補に捜査の担当を外された。

モーテルの死体はショットガンで頭を吹き飛ばされており、死後一週間経過し腐乱状態であった。死体の身元はハリウッド署麻薬課刑事のムーアと推察された。ムーアはメキシコとハワイからロサンゼルスに流れ込む新種のドラッグを追っていた。だが、汚職の疑いありとして内務監査課から身辺を洗われていたのだ。彼は変名でこのモーテルに投宿しており、一ヶ月間宿泊費を前払いしていた。死体のポケットからは遺言と覚しきメモが発見された。部屋にはムーアの指紋のみが残されており、他の投宿者の指紋は消されていて、何か不自然であった。

警察上層部は年末を控え、多くの未解決事件を抱えていることからムーアの死を不良警官の覚悟のうえの自殺として処理をし、一件落着としたい考えであったが、ハリーはこれに逆らい、独自に捜査を開始する。ハリー自身もロサンゼルス市警察殺人課の敏腕刑事であったが、過去に犯人の逮捕をめぐって過剰防衛ということでムーアと同じように内務監査課から取調べを受け、ハリウッド署に飛ばされていたのだった。

近年、ロサンゼルスにはハワイからアイスという新種の麻薬が入り込んでいたが、最近メキシコからブラック・アイスというヘロイン、コカイン、PCPを固めた、安価で高品質の対抗品が出回り、麻薬組織間の抗争があった。そんなある日、ブラック・アイスの運び屋と思われるメキシコ人の他殺死体が発見された。男の胃の中から不妊処理をした蝿が発見され、その蝿はメキシコとアメリカの国境沿いにある蝿根絶センターで飼育されてるものだった。この根絶センターがブラック・アイスと何か関係があるのだろうか? ハリーは上司の命令に背き、国境の町に捜査に向かう。

原作者マイクル・コナリーは前作『ナイトホークス』でアメリカ探偵作家クラブの最優秀新人賞を受賞。本書『ブラック・アイス』はハリー・ボッシュ・シリーズの二作目。街娼であったハリーの母はハリーが11歳の時、ハリウッドの近くの路地で絞殺され、18歳でベトナム戦争に従軍するといった設定はノワール小説の巨匠ジェイムズ・エルロイ自身の経歴と酷似しているが、文体は同じロサンゼルスを舞台とするジョセフ・ウォンボーの作品に近い。ストーリーの展開が軽快な第一級の警察ミステリである。


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