ゼロの罠
著作名
ゼロの罠
著者
ポーラ・ゴズリング
ジャンル
ミステリ
星の数
★★★
出版社
ハヤカワ文庫
原作出版
1981
備考

乗客たちはつぎつぎと目覚め始めていた。まだ、機上でハイジャッカーに射たれた薬のせいで頭の働きは鈍い。だが、その半醒の状態も長くは続かなかった。窓の外の光景を見て、彼らは一様に呆っ気にとられた。自分の眼がとても信じられなかった。彼らが今いる豪邸は、何マイル続いているのかわからない雪原に囲まれている。ただ雪と氷の世界だった。外の寒暖計の目盛りはマイナス29度。たとえコートを着ても一時間とはもたない寒さだ。彼らは北国の、それも北極に近い一軒家に置き去りにされていたのだ!

中東のアダバット空港を離陸直後に乗っ取られた707貨客機の乗客は9人。英国政府の要人の娘、天文学者、殺人容疑者を連行中の警官、大使館付きの武官、土木技師一家、歌手……表面的には何のつながりもない顔ぶれだった。ハイジャッカーたちの狙いは何なのか? なぜ、これほどの手間をかけて彼らを誘拐したのか?

天文学者スキナーを中心に乗客たちが必死に脱出方法を模索する間に、本国の捜査陣のもとに犯人側の要求が届けられた。それは、三百万ドルの金、囚人の釈放から、世界最高の指揮者を使った音楽会の開催まで、数々の常軌を逸した内容だった。そして期限は六週間……。


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