我輩はカモじゃない
著作名
我輩はカモじゃない
著者
スチュアート・カミンスキー
ジャンル
ハードボイルド
星の数
★★★
出版社
文春文庫
原作出版
1978
備考
海外ミステリ全カタログより

俺はロサンゼルスの私立探偵トビー・ピータースである。今さっきマイアミで静養している引退したアル・カポネに会って、シカゴに向かう汽車に乗っているのだ。そもそもはMGMの依頼でマルクス兄弟のトラブルを解決するために、俺が雇われたのだった。チコ・マルクスは大の博打好きで借金を至るところにつくっていた。そして、十二万ドルという大金をシカゴのジーノという男から返せと脅かされているのだった。もし金を返さなければ、お前の死体を弟たちのもとに送りつけると。

もちろん、それは言いがかりだった。チコが借金を作ったというその頃、彼はラスベガスにいて、別の借金をつくっていたのだ。そこで俺は、マルクス兄弟から金を強制的に取ろうとしているジーノという男に会って事実を確かめ、トラブルを解決しようとしているのだった。

俺はジーノというマフィアと会う手筈を整えるために、旧知の知り合いの縁からアル・カポネに会い、彼に渡りをつけるとシカゴに乗り込んだ。しかしロサンゼルスからシカゴに行った早々、シカゴの寒さに風邪を引いてしまった。しかも都合の悪いことに汽車を降りた俺は、シカゴで早速警官のお迎えを受けた。警官の名はチャック・クラインハンズ。彼は俺と取引をしたいという。彼は俺に情報を提供し、俺も分かったことを彼に知らせるという取り決めを結んだ。しかし、泊まったホテルを留守にした矢先、戻った俺を迎えたのはクロゼットに横たわる死体だった。死体はアル・カポネのボディガードだったレオナルド・ピストルフィ。冷酷な殺し屋だった。なぜこいつがシカゴの俺の部屋にいて、しかも殺されているのだ?

警察の取調べを受けたあと、カポネに代わって今、シカゴを仕切っているフランク・二ティを尋ねたが、冷たく拒絶された。手がかりを失って風邪もさらにひどくなった俺は、バーに勤めるマール・ゴードンという女と知り合った。ファイアサイドというカジノにジーノらしき男がいることを彼女に聞いた俺は逆に襲われ、殺されそうになるところをダンディーなイギリス人に助けられた。八方行き詰まった俺は賭けに出ることにした。背の低いユダヤ人で少しでも似ていればチコ・マルクスを偽ることは不可能ではないのだ。俺はそう仮定してチコ・マルクスを騙している奴を捜すことにした。

本書はマルクス兄弟を筆頭にアル・カポネ、フランク・二ティなど禁酒法時代のマフィアと汚職警官たちが牛耳るシカゴを舞台に繰り広げる軽ハードボイルドである。

カミンスキーの人物造形は優れていて、タクシー運転手のレイや敵役のマフィアも魅力的なキャラクターになっている。鼻水を啜る探偵トビーにも中年になった探偵の悲哀が感じられる作品である。


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