アイランド
著作名
アイランド
著者
トマス・ペリー
ジャンル
冒険小説
星の数
★★★★
出版社
文春文庫
原作出版
1987
備考
海外ミステリ全カタログより

人なつこそうであけっぴろげ、健康的な顔をしたハリー・アースキンと、かわいいとぞくぞくするほどの美人の中間に位置する妻のエマはベテランの詐欺師夫妻。
カレッジで知り合って以来、10年間いろいろな苦難を乗り越えてきた二人だが、今度のは別だった。
マフィアのボスに届けるべき50万ドルを着服してしまったのだから。

二人は追っ手をまいてマイアミでジャマイカ行きのボロ船をチャーターする。
ハリーは船の上で海図に目を通すうちに、素晴らしい金儲けのプランを思いつく。
ジャマイカと南米大陸からほぼ等距離の公海上にあり、いかなる国もその領有権を主張していないカリブ海に浮かぶ小島を自分達のものにして、国を造り、税金逃れや汚れた金の洗浄が出来るようにし、上前をはねようというのだ。

島を急襲して鎮圧するため、ハリーたちは腕利きの元傭兵ジョン・ヴィカーズを仲間に引き入れる。ところが、島にたどり着いてみると、それは1日のうち半分は海面下に沈んでいる、浅瀬にすぎなかった。

だが、そんなことで計画をあきらめるハリーではなかった。ハリーは島の造成を思い立ち、コスタリカから大量の車のスクラップを運んで島の周りに埋めたり、廃棄物を埋めてはセメントで塗りこめ、その上を土で覆って、島が海面から少しでも高くなるようにした。かくして島の面積はどんどん拡大し、6年間で100近い国と条約を結ぶことに成功、独立国として認められるようになった。観光客も訪れるようになり、すべてが順風満帆に思えたある日、島は正体不明の男たちの襲撃を受ける。

小学生のころ、アーサー・ランサムの『ツバメ号とアマゾン号』やジュール・ヴェルヌの『二年間のバカンス』に描かれた少年たちの冒険譚、TVで放送されるアニメ『冒険ガボテン島』に胸をときめかせていた時期があった。壮大なホラ話とも言うべき本書を読むと、そんな懐かしい感動が甦ってくる。この心躍る「国家ごっこ」に参加するのは、一癖も二癖もある善人たち(?)ばかり。読み手もリアリティなど気にせず、とにかく理屈なしに楽しめばいい。まさに痛快無比という言葉がぴったり。


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