さむけ
著作名
さむけ
著者
ロス・マクドナルド
ジャンル
ハードボイルド
星の数
★★★
出版社
ハヤカワ文庫
原作出版
1964
備考

ある事件の証人として法廷に出ていた私立探偵リュウ・アーチャーは、傍聴席に坐っていた一人の青年に話しかけられた。彼の名はアレックス・キンケイド、結婚式をあげたばかりの妻ドリーが出て行ったまま戻らないので、探し出してくれという。行きがかり上、アーチャーは、この仕事を引き受けることにした。

ドリーとアレックスは新婚旅行の最中で、サーフハウス・ホテルに滞在中だった。アレックスが留守の間、顎ひげを生やした初老の大男がドリーを訪ねて来て、その直後に行方不明になっている。調べてみると、この顎ひげの男はチャック・ベグリーといい、ワインセラーの店員だった。アーチャーはキンケイドとともにベグリーを訪ねた。

ニューカレドニア島で10年間働いていたのだ、とベグリーは身の上話をした。彼は別れたまま行方が知れない一人娘を捜していた。偶然、よく似た娘ドリーを見かけたので会いに行ったが、人ちがいと判明したため、そのまま帰ったという。

手掛かりは途絶えたかに見えたが、ベグリーの情婦マッジ・ゲルハーディが、ごく最近、ドリーを目撃していた。彼女の話から、ドリーが大学教授ロイ・ブラッドショーの母親ミセス・ブラッドショーの運転手をしながら、大学に通っていることがわかった。アーチャーは大学へ出かけ、ついにドリーに会うことに成功した。

「あのひとは夫じゃないわ。実質的にも、結婚を解消するようにいってあげて」
と彼女は、頑強にアレックスのもとへ帰ることを拒否した。破滅をまきちらすのが、自分の特技だともいった。大学内で、アーチャーはもう一人、奇妙な女性と知り合った。ヘレン・ハガティ。ドリーの主任教授である。彼女はアーチャーを自宅へ案内し、何者かに脅迫されているから身を守ってくれ、と頼んだ。ヘレンの態度に媚態を見たアーチャーは、この申し出をやんわりとことわった。

その夜、絶対に戻らないといっていたドリーが、アレックスのもとへ帰ってきた。しかし、彼女の手は血まみれで、「人を殺したわ!」と叫んでいた。その言葉は嘘ではなかった。彼女にいわれたとおりにアーチャーが出向いた先はへレンの自宅であり、ヘレンの死体が横たわっていたのである。


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