黄色い部屋の秘密
著作名
黄色い部屋の秘密
著者
ガストン・ルルー
ジャンル
本格推理
星の数
★★★
出版社
創元推理文庫
原作出版
1907
備考

私が中学生のときに初めて読んだ密室ものなので印象が深い。

――グランディエ館、すなわち、スタンジェルソン教授邸で、恐るべき凶行が演じられた。老僕ジャック爺さんは語った。

「マチルドお嬢様が、お休みをおっしゃって『黄色い部屋』に入られました。ちょうど鳩時計が12時半を打ったとき、『黄色い部屋』から『人殺し!』というお嬢様の悲鳴、続いて銃声、格闘でもしているような音。わたしたちは驚いてドアに走りよったのですが、内側から鍵と掛金で厳重に戸締りされているので、びくともしません。窓のほうに回ってみますと、鉄格子に異常がないばかりか、よろい戸もぴったりと閉まっています。そのうちお嬢様の声は弱まり聞こえなくなりました。ようやくドアを破ってなかに入ると、お嬢様は虫の息、ひどい格闘のあった様子で、壁とドアには血染めの手の跡がついており、床にはハンカチとベレー帽、そしてまだ新しい足跡があり、わしのピストルが落ちておりました――」

ちょうど、わたしがこの記事を読んでいるとき、部屋に入ってきたのが「レポック紙」の記者、ジョゼフ・ジョゼファン、通称ルルタビーユだった。彼はわずか18歳ながら、編集長がこれはと思う事件には必ず第一線に送り込む敏腕記者だった。

「ぜひ力を貸してほしいんだ。ダルザック氏に会って、話す必要があるんだ」
スタンジェルソン嬢と近く結婚するはずだったダルザック氏は、わたしの知人だったのだ。
スタンジェルソン邸の門前に着くと、わたしたちは何事か実験中のひとりの男を見た。

「フレデリック・ラルサンが活動中だ!」

ルルタビーユが敬意をこめてこの高名な探偵に挨拶し、邸内に入れないか交渉を始めたとき、折りよくダルザック氏の乗った馬車が来た。わたしが無二の親友だと紹介したルルタビーユが新聞記者とわかったとたん、ダルザック氏は、失礼する、というなり馬に鞭をあてた。その瞬間、ルルタビーユは手綱を握ると、わけのわからぬ文句を口にしたのである。

「“牧師館の魅力いささかも失われず、花園の輝きもまた”」
ダルザック氏は、ぎくりと身を震わせ、すぐさま馬車から飛び降りてきた。
「まさか! そんな!」

私が読んだ本は戦前のルビ付きの翻訳で、スタンジェルソンはスタンガスンでした。
ルルタビーユはルレタビュイユでした。だから今の本はなじめません (笑)


inserted by FC2 system