マルタの鷹
著作名
マルタの鷹
著者
ダシール・ハメット
ジャンル
ハードボイルド
星の数
★★★★★
出版社
ハヤカワ文庫
原作出版
1930
備考

暗闇で電話のベルが鳴った。スプリングがきしんで、男の声がした。
「ああ、おれだ……死んだって……わかった……15分くれ、じゃあ」
目覚まし時計の針は2時5分すぎをさしていた。開け放した窓から湿った風が吹き込み、アルカトラズ島の霧笛の鈍いうめき声を10秒おきに運んでくる。スペイドは手巻きの煙草に火を点じた。私立探偵事務所を共同で開いている相棒のマイルズ・アーチャーが何者かに射殺されたのだ。

その前日、アーチャーはワンダリーという女の依頼で、彼女の妹と駆け落ちしたフロイド・サーズビーという男の尾行を引き受けたばかりだった。
スペイドは夜霧につつまれた現場で、百戦錬磨のアーチャーが何の警戒もなく、一発で胸を撃ち抜かれたことに疑問を感じた。

家に帰ったスペイドが眠れずにバカルディを飲んでいると、サンフランシスコ市警のダンディ警部補がみずから出むいてきた。こんどはサーズビーが滞在中のホテルの正面で射殺されたという。連続殺人の最重要容疑者にスペイドが挙げられたらしい。彼はここしばらくアーチャーの妻と関係をもっていた。

スペイドはワンダリーという女から事情を聞きだそうとするが、彼女の話は支離滅裂でさっぱり要領を得ない。本名はブリジッド・オショーネシー。美女の泣き落としに、スペイドはつい彼女を警察や敵の手から守る約束をしてしまう。

事件の本筋がみえてきたのは、しかし別の方角からだった。妙になよなよした浅黒い外国人ジョエル・カイロが事務所を訪れて、「黒い鳥の彫像」を取り戻してくれたら、5千ドルを提供しようと申し出たのだ。彼はスペイドがそれを隠していると疑って拳銃をつきつけた。スペイドはあっさり逆襲し、カイロは手付金の2百ドルを取られて手ぶらで帰っていった。「黒い鳥の彫像」の行方を追っているのは3人。オショーネシー、カイロ、そしてガットマンという男。そして、その彫像は16世紀に起源をもつ最高級の宝玉をちりばめた逸品であることがわかってきた。

アメリカ・ハードボイルド探偵小説を代表する最高傑作。


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