ミロ・ミロドラゴヴィッチ

「酔いどれの誇り(訳/小泉喜美子)」より

「おれの名前はミルトン・チェスター・ミロドラゴヴィッチ三世。職業は酔っぱらい。神様も公認さ」

愛称ミロ。今の職業は私立探偵だ。モンタナ州の小都市メリウェザーの没落した名家の出身。五十三歳の誕生日に手に入るはずの、祖父の遺した信託財産だけを頼りに、汚れ仕事で糊口をしのぐ毎日だ。十年前までは群保安官補だったが、その職を辞した後は離婚専門の私立探偵として過ごしてきた。だが、その職業ももうおしまい。モンタナ州の離婚法が改正になってしまったからだ。失意のミロは、ただ昼間から酔っ払うだけ。

そのミロの事務所のドアがノックされ、おずおずと女が入ってきた。依頼人だ。いかにも所在なげなその女は、気持ちを落ち着けるためか、こんなことを口走った。
「ウイスキー・サワー、いただけます?」――風変わりな「かわいい女」の依頼を受け、ミロの彷徨が始まる。詩人・ジェイムズ・クラムリーが送る情緒溢れる私立探偵小説。

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