コンチネンタル・オプ

「海外ミステリ・ガイド」仁賀克雄著(1987)より一部抜粋

ヴァン・ダインやクイーンと同時代に、アメリカでは全く新しいタイプの名探偵が生まれた。ダシール・ハメットの創造した、コンチネンタル・オプとサム・スペードである。それまでの思索型のインテリ探偵から、行動派の腕ぷしの強い探偵の登場である。現実の暗黒街を舞台にしたハードボイルドは、それにふさわしい私立探偵を必要とした。

コンチネンタル・オプというのは名前ではなく、コンチネンタル探偵社サンフランシスコ支局オペレーター(調査員)の略で、無名の一探偵なのだ。1929年「血の収穫」で一躍有名になったが、初登場は「ブラック・マスク」誌23年10月号の「放火罪及び……」である。身長5フィート6インチ(173センチ)、体重190ポンド(86キロ)、40歳前後の中年男で、本名・素性・経歴は一切不明である。事件に対しては思い入れも感傷も自慢もなく、ひたすら職務として非情に振る舞うところに、従来のミステリにはない新鮮味があった。ハメット自身がピンカートン探偵社の調査員の経験があり、これがオプの造型に反映している。

inserted by FC2 system