シャーロック・ホームズ

「海外ミステリ・ガイド」仁賀克雄著(1987)より一部抜粋

シャーロック・ホームズ

名探偵の代名詞になっているのが、コナン・ドイルのシャーロック・ホームズである。1887年12月「緋色の研究」で登場したホームズの容貌を、記述者ジョン・H・ワトソン医師はこう述べている。

「身長は6フィート余、極端に痩せているので、それだけ長身に見える。眼はぼんやりとしている時を除けば、炯々と鋭い輝きを見せ、肉の薄いワシ鼻は顔全体をひきしめて、俊敏果断な印象を与える。その上顎がしゃくれて前に突き出しており、しかも角張っているから、なおさら強い意志を持つ人と映った」

この名探偵はヴァイオリンの名手であり、棒術、ボクシング、剣術の達人で、法律や化学には詳しいが、文学、哲学、天文学の知識は皆無で、植物学は毒物、資質学は土壌の鑑定、解剖学についてもすべて犯罪に関係した面にだけの知識を持っている極端な人物である。

原作にはホームズの素性などあまり触れられておらず、兄のマイクロフトが出てくるくらいだが、ホームズ・ファン(シャーロッキアン)は原作にないホームズの生涯を作り上げている。ベアリング=グールドの「シャーロック・ホームズ――ガス灯に浮かぶその生涯」(1962)によれば、ホームズは農場主サイガー・ホームズと、ヴァイオレット・シェリンフォード夫妻の三男として、1854年1月6日にヨークシャー州に生まれたことになっている。

「緋色の研究」で登場した時が32歳、「最後の挨拶」で引退したのが60歳、農園でミツバチの飼育をし、ローヤル・ゼリーのおかげで長生きをし、1957年1月6日の百三歳の誕生日に息を引き取ったことになっている。

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