マイクル・コナリー

* 印はハリー・ボッシュ・シリーズ

作品 出版社
★★★ *ナイトホークス 1992 扶桑社ミステリー
★★★ *ブラック・アイス 1993
★★★ *ブラック・ハート 1994
*ラスト・コヨーテ 1995
★★ ザ・ポエット 1996
*トランク・ミュージック 1997
わが心臓の痛み 1998
★★ *エンジェルズ・フライト 1999
バッドラック・ムーン 2000 講談社文庫
★★★★ *夜より暗き闇 2001
★★★★ *シティ・オブ・ボーンズ 2002 ハヤカワ文庫
★★★ チェイシング・リリー 2002
★★★★ *暗く聖なる夜 2003 講談社文庫
★★★★ *天使と罪の街 2004
★★★★ *終決者たち 2005
★★★★ リンカーン弁護士 2005
*エコー・パーク 2006
*死角 2007
真鍮の評決 2008
The Scarecrow 2009
*Nine Dragons 2009
The Reversal 2010
The Fifth Witness 2011

Michael Connelly [米 1956− ]
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 フィラデルフィア生れ。フロリダ大学でジャーナリズムを専攻。新聞記者を経て作家に。『ナイトホークス』(1992)でMWA処女長篇賞。チャンドラーの影響を受け、ロサンゼルス市警の殺人課刑事ハリー・ボッシュを主人公に、現代のハードボイルドを追求。

http://www.michaelconnelly.com/

ハリー・ボッシュ・プロフィール

 ハリー・ボッシュ、本名ヒエロニムス・ボッシュは、1950年、ロサンジェルス市のクイーン・オブ・エンジェルズ病院で生まれた。母親は、マージョリー・フィリップス・ロウ。父親不詳。息子の名前は、15世紀のオランダの幻想画家ヒエロニムス・ボッシュにちなんで、母親がつけた。anonymous(匿名の、だれでもない)とおなじ韻を踏むんだと他人に説明する場面がシリーズ中、何度も繰り返されるが、自分はなにものなのか、と終わることのない自問をボッシュに迫るじつに象徴的な名前であろう。若くしてボッシュを生んだ母親は、娼婦をして、息子を育てるが、母親不適格を理由にボッシュは10歳のとき、養護施設に入れられる。

 61年10月31日、母マージョリーは何者かに殺され、ハリウッドの路地で発見される。ボッシュ11歳のときだった。

 その後、18歳になるまで(17歳の記述もあり)、養護施設と里親のあいだを転々とする。中には、ボッシュが左利きであることに目をつけ(コナリーも左利きである)サウスポーのプロ投手に仕立てて、金にしようとした里親もいた。

 はじめて意識してジャズを聞いたのは、1965年、15歳のとき、カーラジオから流れるチャーリー・パーカーを耳にして以来、ジャズのとりこに、とりわけアルトサックスが大のお気に入りになる。

 68年、陸軍入隊、ヴェトナム戦争に従軍。トンネル工作兵(ネズミ)として、ヴェトコンと渡り合い、不眠症を永年の友とするなど深いトラウマを被る。

 70年ごろ、除隊し、ロスにもどり、父親を探し出すことで、自分探しをおこなおうとした結果、癌で死期まぢかだったじつの父親であり一流の弁護士であったJ・マイクル・ハラーから、「おまえはもしかしたらハリー・ハラーになっていたかもしれないな」と言われる。ヘッセの本の登場人物ハリー・ハラーは、人生に幻滅した孤独な男、まともなアイデンティティをいっさい持っていない男だった。父親が死んだ年の8月、ボッシュは、ロス市警に採用された。

 ハリウッド署とウィルシャー署で5年ほどパトロール警官を務めたのち、刑事に昇進。ヴァン・ナイス署の強盗課と窃盗課、ノース・ハリウッド署の殺人課刑事を経て、エリート部門、市警本部強盗殺人課の殺人特別班で8年過ごす。

 89年、連続殺人事件(「ドールメイカー事件」)の容疑者が丸腰でいるところを射殺したとして、数週間の停職後、ハリウッド署に左遷される。

 90年、5月、「ナイトホークス事件」で、運命の女性、エレノア・ウィッシュと知り合う。肩に銃創を受け、メキシコで6週間休暇。

 同年あるいは翌年12月、「ブラック・アイス」事件。そのまえ4ヶ月間、当時検屍局長代理だったテレサ・コラソンとつきあっていたが、結局、別れ、同僚刑事の未亡人シルヴィア・ムーアと知り合う。

 92年4月29日、ロドニー・キング殴打事件に端を発するロス暴動勃発。

 93年、43歳のとき、ボッシュが射殺したドールメイカー事件容疑者の遺族から訴訟を起こされていた矢先、あらたなドールメイカーの被害者が発見される(「ブラック・ハート」)。

 94年1月17日、ロス大地震発生。ボッシュの家も被害を受け、立ち退き命令を受ける。3ヵ月後、シルヴィアと別れる。上司に暴行を働いたことで、強制ストレス休暇をとるよう命じられ、その期間を利用して、30数年前の母親殺害事件を調べる(「ラスト・コヨーテ」)。

 96年1月、ハリウッド署盗犯課に復職し、9月1日殺人課に復帰(「トランク・ミュージック」)。エレノア・ウィッシュとの再会。

 98年?、「堕天使は地獄へ飛ぶ」事件。

 01年9月11日、同時多発テロ。

 02年1月1日、「シティ・オブ・ボーンズ」事件。ことし、ハリー・ボッシュは、52歳になる。

 幼少時から陸軍に入隊するまでの悲惨な境遇から、すさんだ性格になってもなんら不思議はないのだが、多少、いや、かなり狷介な性格はしているものの、コナリー描くところのハリー・ボッシュは、愚直なまでに真っ当な人間であり、この世から悪を少しでも減らしたいという使命感はけっして潰えることがない。それは母親にけなげなまでの無償の愛を彼女が死ぬまで一身に浴びていたからだろう――シリーズにときどき登場する子ども時代のハリーと母親とのエピソードは、儚く、せつなく、強く読み手の胸をうつ。また、弱者に対するまなざしがつねに優しいことも、このどうしようもないほど融通のきかないわからず屋の、いい女にすぐめろめろになってしまう中年男に共感を覚えてしまう点だ――本書でも、20年前の少年に対して見せる同情心、深夜に嫌いな猫の世話をしに出かけてしまうところなどによく表れている。

「シティ・オブ・ボーンズ」訳者あとがきより。


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