ジャスティンはわたしの頬に手を触れ、顎の先までそっと撫でおろした。目のなかの渇きはいよいよ深まり、スター・サファイアのような光を放った。「ぼくは間違いなく大成するよ、フリモント。仕事は驚くほどうまくいっている」将来の展望を口にすることで、これからしようとしていることに勇気と許可を求めているかのようだった。
どうして許可など求めるのだろう――わたし自身、彼の口づけを望んでいるのに? わたしには彼の変貌が頼もしく思えた。彼は指先に力をこめて、わたしの顎を引きあげ、雄々しく唇を重ねてきた。わたしは「おめでとう」といおうとしたが、言葉を発する機会は与えられなかった。唇を開いたとたん、ジャスティンが唇でふさいで舌を差しいれてきたのだ。
それは、わたしたちがはじめてかわす激しい口づけだった。わたしにとっては生まれてはじめての本物のキスだった。彼の舌は、わたしに火をつけたに違いなかった。わたしはたちまち彼の口づけを深くあじわいたくなった!
わたしたちはそのまま、時間も忘れて激しく、ひたすら燃えあがった。ふと見ると、ジャケットとブラウスのボタンはすっかり外れていた。自分で外したのか、彼が外したのか、それすら覚えていない。けれども、キャミソールのリボンを解いて、ジャケットとブラウスを肩から床にすべり落としたのは、ジャスティンの手だった。彼はわたしのまえにひざまずいて、キャミソールから乳房を解き放った。脈打つ乳房の先端を交互に口にふくまれると、わたしはあまりの快感に絶命するのではないかと思った。
――以下略。
窮屈なしきたりなんて、まっぴら――わたしは女ひとり、タイピング・サーヴィス業で身を立てることにした。だがやがて、わたしの依頼人たちに次々と恐ろしい事件が! オフィスにやってきた中国人が、数日後何者かに殺され、作家志望の青年は、原稿を預けたきり消息を絶ってしまった。好奇心を抑えきれず、わたしは調査にのりだすが……ガス灯時代のサンフランシスコに勝ち気なアマチュア探偵登場。マカヴィティ賞受賞作。