舞台はおそらく近未来のアメリカで、核戦争かなにかが原因で世界は破滅している。空はつねに分厚い雲に覆われ、太陽は姿を現さず、どんどん寒くなっていく。地上には灰が積もり、植物は枯死し、動物の姿を見ることはほとんどない。生き残った人間たちは飢え、無政府状態の中で、凄惨な争いを続けている。そんな死に満ちた暗澹たる終末世界を、父親と幼い息子がショッピングカートに荷物を積んで旅をしていく。寒冷化がいよいよ進み、次の冬が越せそうにないため、暖かい南をめざしているのだ。
父と子がたどる<ザ・ロード>には野蛮人と化した者たちが出没する。捕まれば息子が何をされるかわからない。父親は息子を守るために自身が鬼になる覚悟を決めていて、脅威となる相手を殺すことも辞さないし、他人を助けることも極力避ける。ところが少年は、破滅後の世界しか知らないのにもかかわらず、天使のように純真で、自分たちは善であり悪と戦っているのだという父親の話をまっすぐに信じ、ほかの生存者を助けてあげてほしいと懇願するのだ。だが、この極限状況でそんな人間らしい優しさを維持できるのか。人間が人間でいられるかどうかのぎりぎりの限界を試されながら、二人の旅は続く。
友達はいた? ああ。いたよ。 たくさん? うん。 みんなのこと憶えてる? ああ。憶えてる。 その人たちどうなったの? 死んでしまった。 みんな? そう。みんな。 もう会えなくて寂しい? うん。寂しい。 ぼくたちどこへ行くの? 南だ。