10ドルだって大金だ
著作名
10ドルだって大金だ
著者
ジャック・リッチー
ジャンル
短篇ミステリ
星の数
★★★
出版社
河出書房新社
原作出版
1960
備考
あとがき「ジャック・リッチーのクールな魅力」より

本書は『クライム・マシン』に続くジャック・リッチー傑作集第二弾です。 財産目当てに世間知らずの女と結婚した上で、その妻の殺害を計画する男を待っていた予想外の展開を、シニカルに綴った「妻を殺さば」、紛失した毒物の捜索にお屋敷に赴いた警部補が無邪気(?)な子供たちに徹底的に翻弄される<恐るべき子供たち>物の傑作「毒薬であそぼう」、展覧会のため遥々フランスからやって来た名画を標的に巧妙な犯罪計画が進行する「誰が貴婦人を手に入れたか」など、ひねりのきいたプロット、クールなユーモア、リッチー・タッチともいうべき軽妙なストーリーテリングは今回も健在。『クライム・マシン』で好評を博した謎の超人カーデュラと、迷刑事ヘンリー・ターンバックルのシリーズも、もちろん収録しています。

読んでいるあいだはひたすら愉しく面白く、読み終えた後には見事に何も残らないジャック・リッチーの作品は、エンターテインメントとしての短篇ミステリのお手本といってもいいでしょう。無駄な言葉をそぎ落とし、可能なかぎりシンプルにストーリーを語ること、それが短篇ミステリの専門家リッチーの一貫した小説作法でした。ともすれば細部ばかりがいたずらに肥大した大長篇が量産される昨今、このあえて書き込まない、「人間を描く」ことこなどには見向きもしない姿勢はいっそ爽快ですらあります。本書では、そうしたリッチー・ミステリの魅力が十二分に発揮された十四篇を揃えました。軽さに徹した作家のクールな凄みをご賞味ください。

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