本編の語り手ウェス・コルヴィンはロングと同じレッド・ネック出身の、ニューオーリンズにはまだ日が浅い新聞記者。いずれは大特ダネをものにしてワシントンかニューヨークへ出たいと思っている鼻っ柱の強い硬骨漢で、街の保守的な空気には批判的だ。にもかかわらず、歴史上の人物ビアンヴィルの子孫にあたる、美しい女性ドニーズに恋をしてしまう。そして「レッド・ネックが貴族の女性に手を触れることは死を意味した」ことなどを考えてひるんだりする。そうさせる空気がいまだに存在しているからだろう。暑い八月のある夜、麻薬に関する情報を集めていたウェスが匿名の電話に呼び出されてバーに出かけてみると、その場に居合わせた十三人全員がマシンガンで惨殺されていた……。