夜の熱気の中で
著作名
夜の熱気の中で
著者
ジョン・ボール
ジャンル
警察ミステリ
星の数
★★★
出版社
ハヤカワ文庫
原作出版
1965
備考

ハイウェイで楽団の指揮者が殺されているのをパトロール中の警官が発見、黒人のティップスは駅の待合室からウムをいわさず容疑者として連行される。

黒人嫌いゆえに署長に就職できたギレスピイは、ティップスを問いつめる。が、照会の結果、「調査官。殺人ほか重大犯専門。成績優秀。本人の協力を要する場合は連絡乞う」と返電があり、加えて、死体から盗んだ財布を持っていた「白人の屑」が逮捕されたとの報告で、ギレスピイはティップス刑事を釈放する。

ところが、ティップスは一目で「白人の屑」が犯人でないことを察知し、冷静な口調で懇切丁寧にギレスピイ署長に講釈する。容疑者から名探偵へ早がわりといった見せ場だ。

新米の署長は腹は立つけれども、だまってひっこむよりしかたがなくなります。せめてもの腹いせに「おまえの住んでいるところじゃ、みんななんておまえのことを呼ぶんだ?」というと、ティップスは皮肉たっぷりに「ミスター・ティップスと呼んでいますがねえ」と切り返す。

ここから「勇猛果敢あくまで冷静――はげしい人種差別に耐えながら、冷静な推理眼と柔道、カラテ、合気道を自在にこなす」(これは出版社の宣伝文句)ティップスの捜査活動がはじまる……。

警察内部や人種偏見をリアルに描き出す本作は、MWA最優秀処女長編賞を受賞。名探偵の一人として数えられるティップスのシリーズはこのあとも続いた。


inserted by FC2 system