九月はトロントでいちばんよい月だ。
暖かく晴れた日が多いし、夜は涼しく眠りやすい。
だが、ソールター警部の身辺には難問が山積だ。
14歳の息子はポルノ雑誌を隠し持っていたし、妻の仕事も忙しすぎる。
彼自身は健康診断で血尿が出て……私生活だけではない。
彼の許にまわってきた放火殺人事件も厄介だった。
被害者の骨董店主は多くの人間とゴタゴタを起こしている。
そのうちの誰かが火をつけたのか、それとも――
ソールター警部の地道な捜査が掘り当てた事件の意外な側面とは?
中年警部の悩み多き生活と、奇妙な事件の顛末を描く注目作。