春は死を思うときではない――勤めを終え、事務所を出てきた初老の男の心も春を迎えてはずんでいた。すると、どこからともなく一発の弾丸が飛んできて、彼の眉間に当たった。.308口径のレミントン銃から発射されたものだった。事件はこれで終わらなかった。ある朝、新聞をとりに玄関へ出た弁護士が同じ弾で撃たれ、また街をそぞろ歩いていた中年の売春婦にもそれが襲いかかったのだ。だが、必死の捜査にもかかわらず、犠牲者同士の関連は何もつかめない。次に狙われるのは誰か? また犯人の動機とは? 恐るべき過去を秘めた殺人劇を描く秀作。