エジプト十字架の謎
著作名
エジプト十字架の謎
著者
エラリイ・クイーン
ジャンル
本格推理
星の数
★★★
出版社
各社出版
原作出版
1932
備考

ニューヨーク市警察本部殺人課のリチャード・クイーン警部の息子で、数々の難事件を解決した素人名探偵エラリイ・クイーンは、愛車デュウゼンバーグでクイーン警部を出張先のシカゴへ送る途中、ウエスト・ヴァージニア州の人口二百の小さな村アロヨで、残酷、かつ不可思議な殺人事件に出くわした。

村の小学校校長アンドルー・ヴァンがクリスマスの早朝、国道から村へ入るT字路で、首を落とされT型の道標にはりつけにされた姿で、村はずれの山中に住むピート爺さんに発見されたのである。ヴァンの家の玄関のドアには、血染めの大文字でTが描かれていた。

事件に興味を覚えたエラリイは、父と別れてアロヨに留まり、検死審問に出席した。地方検事の調べでは、被害者のヴァンは十三年前に帰化したアルメニア系アメリカ人で、アロヨの小学校教師募集の広告に応じて、精神薄弱者の下男クリングとともに村に住みついて九年になる。めったに外出もせず、哲学、歴史、天文学の書物を読みふけっていたが、よろず家の主人によれば、村でただ一人、しょっちゅう最高級のキャビアを注文する男でもあった。

ガソリン・スタンド経営者は事件の直前、外国人と思える左足の悪い男に頼まれて、問題のT字路まで車に乗せたという。男の特徴は、エジプトの太陽神の生まれ変わりと自称して万能薬を売り歩く、半ば狂った老人ラ・ハラクトの弟子で、事件の夜依来姿を消したヴェルヤ・クロサックと一致していた。

ハラクトの狂気じみた証言を聞くうち、T字路、道標のT、首無し死体のT、玄関のドアに描かれた血文字のTの奇妙な複合に気づいたエラリイは、飛び入りの証言として、「Tはキリスト教以前、多くの民族の宗教的象徴として用いられ、エジプト十字架と呼ばれていた」と証言した。

事件が迷宮入りして六ヵ月後、エラリイは、ロング・アイランドの高級住宅地で論文執筆中の大学時代の古代史の教師ヤードリー教授から電報を受け取った。家主の富豪、トーマス・ブラッドが殺され、ヴァンと同様、トーテムポールに縛りつけられていたというのである。凶行現場のブラッドの書斎には、やはり血文字のTが残されていた。

地方検事アイシャム、郡警察のヴォーン警部に協力して事件の捜査にあたったエラリイは、一家の人々の様々な姿を知る。ブラッド夫人は対岸のオイスター島でハラクトが主宰するヌーディスト村のポール・ロメーヌと不倫の関係に落ちていた。手紙で地主からその土地を借りる契約をしたのは失踪前のクロサックだった。


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