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著作名
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著者
ブライアン・フリーマントル
ジャンル
スパイミステリ
星の数
★★★
出版社
新潮文庫
原作出版
1996
備考

「ぼくがモスクワに配属されることが決まったよ。永久にここにいることになりそうだ」「あなたはそれを望んでいるの?」と、彼女が訊いた。「ああ」「わたしはやっぱり辞めるかもしれないわ」「どうして?」「わたしは圧倒的な成功を収めたとはほとんどいえないんじゃないの?」「……辞任するようにいってきたやつがいるのか?」「いいえ」「それなら、辞表は出さないことだ」

「あなた、嫉妬してたの?」「訊くまでもないことだろう」「わたしは彼を愛していたわ。……いまとなっては、もう無理だけどね。でも、その前は彼を愛していたの」「もう終わったんだよ」ふたりはナターリャの車にたどり着いた。「まっすぐベルリンへ帰るの?」彼はうなずいた。……「シェレメチェヴォまで送ってほしい?」チャーリーはその申し出に驚いた。

「いつか、またサーシャに会いたいな」「しばらくは無理ね」「時間はたっぷりあるよ。もうぼくはここで暮らすことになったんだから」「そうね」と、ナターリャが遠い声で答えた。「時間はたっぷりあるわね」


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