192×年1月のある寒い月曜日の朝、エラリイ・クイーンはステッキの音を霜のおりた舗道にひびかせてオランダ記念病院に向かっていた。友人のミンチェン博士から、死後硬直について教えを乞うためである。
用をすませたエラリイは博士のすすめで、ある外科手術に立ち合うことになる。執刀するのは東部一の外科医といわれるフランシス・ジャニー博士。患者はこのオランダ記念病院の設立者で、財界、社交界でも名高い大富豪エービゲール・ドールン老夫人その人である。
急傾斜の階段座席のついた大手術室はさながら幕のあがる前の劇場のようだった。左手のドアから、ほっそりした白衣のジャニー博士が不自由な足をひいてあらわれ、小鳥のような目つきで患者を見た。なにか様子がおかしい。布をめくると夫人はすでに針金で絞殺され、死後硬直が始まっていた! 犯人は病院の内部にいるのか? 緊張のなかで息づまる捜査が開始された。