813
著作名
813
著者
モーリス・ルブラン
ジャンル
ミステリ
星の数
★★★
出版社
新潮文庫
原作出版
1910
備考

ダイヤモンド王と呼ばれるドイツ人ルドルフ・ケッセルバックは、ヨーロッパ中を震撼させる秘密を持って南アフリカからパリへやってきた。彼はホテルに投宿し、探偵にピエール・ルデュックという青年を探し出すよう依頼した。だがケッセルバックが秘密を持っていることを嗅ぎ出した人物が二人いた。

その一人がアルセーヌ・ルパンで、彼はホテルを襲ってケッセルバックに秘密を白状させようとした。しかし得られたのは  APO ON という謎の文字だけだった。その翌日同じ部屋でこの大金持ちが刺殺され、シャツにルパンの名刺が残されていた。

事件の捜査にあたったのはパリ警視庁保安部長のルノルマンで、彼はルパンが人殺しをしたとは信じられない思いであった。部屋の掃除をしたボーイはLMと頭文字の入った煙草入れを拾っていたが、それを取りに自室に戻ったところを殺されてしまった。

ルノルマンはその部屋で813と数字が書いてあるレッテルを発見した。遅れてホテルに到着し、悲報を伝えられたケッセルバック夫人ドロシアは泣きくずれてしまった。

ホテルを引きはらったドロシアは移り住んだ所で、ジュヌビエーブという美しい娘と知り合った。彼女らが散歩していると、突然暴漢が襲いかかってきたが、一人の紳士が飛び出してきて危機を救ってくれた。

紳士はセルニン公爵と名乗ったが、ジュヌビエーブの祖母は彼から「ばあや」と呼びかけられて吃驚した。彼女はルパンの乳母ヴィクトアールで、呼びかけた公爵こそ、ルパンの仮の姿だったのだ。

セルニン公爵すなわちルパンはルデュックを探し出したが時すでに遅く彼は死んでしまった。そこで一計を案じ、貧乏詩人ボーブレをルデュックの身がわりにして、ジュヌビエーブに接近させた。もちろんルパンの遠大な計画の一端である。

ケッセルバックの秘密を知っているとみられるスタインウェッグ老人を、ルノルマンは保護したが、その後老人は謎の人物の掌中に落ちてしまう。さらにルノルマンは秘密の地下道を探索中、謎の人物につかまり、簀巻きにされて河に放り込まれてしまった。

「セルニン公爵はルパンである。LM」と書かれた投書が警視庁に届き、ルパンは捕縛されてしまう。だが獄に繋がれたルパンは泰然自若として、ケッセルバックの秘密を解くべく思考を重ねるのだった。


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