オリエント急行の殺人
著作名
オリエント急行の殺人
著者
アガサ・クリスティ
ジャンル
本格推理
星の数
★★★
出版社
各社出版
原作出版
1934
備考

「今夜は寝台車が満員だそうだね?」

「嘘みたいな話です。まるで、今夜にかぎって世界中がいっせいに旅行を始めたようで……」

イスタンブール発カレー行のオリエント急行の寝台車は、その日なぜか満員だった。名探偵エルキュール・ポアロは、二等にかろうじて一室を見つけ、ホッと溜息をついた。

列車は中部ヨーロッパを経て、三日をかけて終点に至る。時間通りにいけば、明朝はベオグラードである。

ところが、夜中の一時にポアロが目を覚ますと、列車は停まったままだった。大雪のためユーゴの山中で列車が雪溜まりに突っこんでしまったためらしい。翌朝、依然列車は雪の壁のなかにああリ、復旧のめどは立たなかった。

そんな外部とは隔絶された“密室”のなかで大富豪の老紳士ラチェットが刺殺死体で発見される。体には十二ヶ所の刺傷が残っていたが、寝室のドアは内側からチェーンが掛けられていた。列車に乗り合わせた乗客は、ありとあらゆる国籍や階級の人が集まっている。犯人は必ずこのなかにいつはずだが、有力な容疑者にはそれぞれアリバイがあった。

事件の謎を解こうとするポアロの前に、被害者ラチェットの過去が浮かび上がってくる。

かつてアメリカでイギリス陸軍のアームストロング大佐の一人娘ディズィが誘拐されるという事件がおきた。身代金の二十万ドルは犯人側に支払われたものの、ディズィは死体となって発見された。そして、身重の母親はショック死、父親もピストル自殺を遂げるという悲惨な結果に終わった。一味のボスとしてカセティという男が逮捕されるが、それも証拠不十分で釈放されてしまった。

実はこのカセティこそ、ラチェットの真の姿だったのだ。彼は変名を用いてアメリカを去り、富豪の仮面の下でゆうゆうと暮らしていたのである。

事件を捜査するポアロの前に立ちふさがる数々の謎――。乗客に目撃された女のような声をした小柄な男、赤いガウンの不思議な女は何者か。そして、何よりも死体に残された十二ヶ所の傷は何を物語るのか。寝台車の十二人の乗客一人一人の証言と過去から、ポアロの灰色の脳細胞は驚くべき真相を見出す。


オリエント急行

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