僧正殺人事件
著作名
僧正殺人事件
著者
S.S.ヴァン-ダイン
ジャンル
本格推理
星の数
★★★
出版社
各社より出版
原作出版
1929
備考

アメリカミステリ黄金時代の先駆者となったS・S・ヴァンダインの『グリーン家殺人事件』と双璧をなす名作が本書『僧正殺人事件』です。

ニューヨークの中心街にあるディラード教授邸で、アーチェリーの名手だった男が胸を矢で刺されて殺されているのが発見されます。男の名がコック・ロビンであったことから、犯人はマザーグースの「だあれが殺したコック・ロビン?」の歌を意識して犯行を行ったと考えられました。警察は直前まで被害者と口論していた男を逮捕しますが、探偵ファイロ・ヴァンスは腑に落ちません。

そして数日後、またもやマザーグースの歌そっくりの状況で、数学が得意だった大学生が、ディラード邸からほど遠くない公園で頭部を銃で撃ち抜かれて死亡します。そして、殺人事件が発生する度にマスコミに送られてくる手紙には「僧正」という犯人の名が記されていました。

マザーグースとチェスをモチーフに繰り広げられる本書は、純粋な知的ゲームに徹しており、登場人物の性格や日常描写は必要最小限に抑えられています。それ故、全体的に冷たい感じがしますが、ある意味そこがヴァンダインの持ち味ともされています。一見何の関係も無さそうな連続殺人事件ですが、驚くべき動機が隠されています。

エラリー・クイーンと比べて、論理的な構成に難があったり必然性に乏しかったりする面もありますが、テーマ性を持った本格ミステリとしてはとても楽しめます。


inserted by FC2 system