樹海戦線
著作名
樹海戦線
著者
J.C.ポロック
ジャンル
冒険小説
星の数
★★★
出版社
ハヤカワ文庫
原作出版
1984
備考

元グリーンベレー中尉で、C I Aの仕事も経験したスレイターが、かっての司令官に招かれた。
二人は突然、消音銃の銃弾を浴び、元司令官は射殺された。
その後、ベトナムで一緒に戦った仲間が次々と標的に、自分の命も狙われたスレイターは、暗殺チームとの対決を図る。
スレイターと戦友のパーキンズが武器、弾薬をカナダの森林地帯に持ち込み、待ち構える。
現われたのは、ソ連KGBの特殊部隊だった。
12人の敵を2人で迎え撃つ後半が白眉、リアルな戦闘場面は、作者の体験がものを言ったのだろう。

内藤陳のオススメ文
  マイク・スレイターは元ベトナムの秘密特殊作戦部隊員。サイゴン陥落後は“会社”のために働いていたが、愛妻イレアナを政府の裏切りのために殺され、いままた愛犬アイヴァンを死なせた、深い悲しみと破壊された魂を持つ男だ。ある日、ベトナム当時の司令官“ブル”・ブルックスから受けた電話が……。“ブル”は重要なことだと言った。当時、兵員の80パーセントが負傷し撤退するための弾丸も残っていなかった時ですら、その状況を“些細な問題”と言ってのけた男なのだ。未開の湖で逢ったとき、中佐(ブル)は言った、「重要な国家機密に関連する写真を数枚見てくれ」そのとき、消音M11-イングラムの連射が中佐の身体を撃ち抜いた。最後の言葉は「――あの男はきみを狙うぞ、マルヴァヒル……パーキンズもだ……」

反撃のあとも執拗に迫る暗殺チーム。ついにスレイターは戦友パーキンズと共に“最高に荒涼としてほとんど到達不可能”なカナダの丘陵地帯に適をさそいこみ、迎撃する決心を固めた。わたしは死なずにいて、逃げることを恐れていたのだ……。

一気一気は新年会だが、これこそホンマの一気本(モン)なのだ。山下洋輔氏のピアノ的小説なのだ。スリリングで謎に満ちた展開がほろ苦い哀しさで陳メを酔わせる。湖で、犬舎――自宅で、ユカタンの海中で、ファイナルのカナダでと、戦いもバラエティに富んだ描き分けで臨場感+迫力のバース級。特にウレシイのは細部のディテールの書き込みの凄さ。これぞ良質面白小説の見本なのだよ。

キャラクターもまた魅力キラ星山盛天丼、いつもかみそりの刃を口の中に入れているノヴァック、ひとりだけの軍隊と異名の闘犬(ビット・ブル)アーニー。なんせ凄いぜ、ノバックとこの犬だけで一晩に半ダース入りのビールを5〜7ケースは片づけるのだ。CIAに潜入して重要人物のKGB要員のカイナード。あいつらは政治の風向きをおれたちの友人の生命で調べ、裏切ったと立ち上がる戦友パーキンズ。

パヴリチェンコ率いるチームもゴキゲンだ。ソヴィエト軍のうちで、最高の回数、叙勲され、最高に経験をつんだ特殊戦闘部隊のメンバー12名もなかなかの個性。ラストに光るは名無しの狙撃手。エピローグの皮肉さも鮮やかに、オオ、胸に高熱オススメ自信のシンボリルドルフ他作ブッチギリの面白小説なのであります。


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