殺意の楔
著作名
殺意の楔
著者
エド・マクベイン
ジャンル
警察ミステリ
星の数
★★★★
出版社
ハヤカワ文庫
原作出版
1959
備考

キャレラに夫(金庫破り)を逮捕された女がキャレラを逆恨みし、ニトログリセリンの小壜を持って87分署に乗りこんでくる。ニトロを爆発させてキャレラもろとも、いや、87分署もろともぶっとばして死のうというのである。

その肝心のキャレラはその日、次なる殺人事件の謎を追って、1日中、出かけている。その殺人事件捜査の進行状況が並列して描かれる。署内でのニトログリセリンの女の件は「いつ、キャレラが帰ってきて署もろとも吹っとぶか?」というサスペンスだし、外でのキャレラの捜査の件は「犯人は誰か?」という純然たる謎解きである。

その二つのミステリーが一編のなかに同等の比重をもって交互に描かれる。

ニトロ入りの小さ壜を机の上に置かれて(小さな、と言ったって、何しろ、万が一ひっくり返しでもすれば、たちまち大爆発を起こすのである。そしてまた、もしかしたら、ニトロとは真赤な偽り、ただの水が入っているにすぎない壜かもしれない――)、ときにうろたえ、ときにおびえ、ときに自分を勇気づけ、ときに絶望して行く刑事たち。それはもう本当に“手に汗握る面白さ”なのだ。

そして――結末のあざやかさ!


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