ダンスシューズが死を招く
著作名
ダンスシューズが死を招く
著者
メアリ・ヒギンズ・クラーク
ジャンル
サスペンス
星の数
★★★
出版社
新潮文庫
原作出版
1991
備考
海外ミステリ全カタログより

良質のサスペンスは高級ワインに似ている。口あたりが良いままにページをめくっていくと、いつしか体がほてりすっかり酔っている。本書が正にそうで、クラークは今やサスペンスの女王といっていい出来映えである。一時期はオカルト風な作品もあったが、また読者に手に汗を握らせる焦燥感と恐怖の正道サスペンスに戻っている。

舞台は現代ニューヨーク、一ヶ月足らずの期間の物語である。エリンとダーシーは女子大のルームメイト以来の親友で、未婚の二十八歳。エリンはジュエリーデザイナー。ダーシーはインテリアデザイナー。知り合いの女性テレビプロジューサーのノーナはドキュメンタリー番組の企画で、個人広告「友だちを求む」を出す人間とそれに応じる人間像を取材していた。二人はそれに協力を頼まれ、好奇心から応募者の男性とデートをしていた。相手はほとんどダサイ男たちで一度会えば十分だった。しかし彼女たちはその裏側に潜む危険性についてはまるで無知だった。エリンは応募者の一人ノースと名乗る弁護士と会うと告げてから行方不明になった。ダーシーは数日たって警察に失踪人届けを出した。それがFB I 犯罪捜査官ヴィンスの興味をひいた。最近ニューヨークに住む独身女性六名が個人広告に応じてから行方不明になっていたからだ。こうしてダーシーとヴィンスはエリンの捜査に乗り出していく。

一方で、チャーリーという正体不明のサイコ男のモノローグがところどころに入り、この物語に不気味な緊張感をじわじわと盛り上げていく。しかし決してサイコ・スリラーのような残虐さをあらわにしないところがよい。酸鼻さと恐怖は別物で、その意味から女性にも薦められる作品である。

二人の捜査の対象にはさまざまな男たちが登場する。宝石詐欺のブローカー、個人広告の本を書くため応募したいわくありげな精神科医、エリンのマンションの怪しげな管理人、大学教授を名乗るいかさま男、二重生活を楽しむ女たらしのサラリーマンなど。その一人がじつは恐るべきサイコ・チャーリーだった。エリンはどうなったのか? ダーシーはヴィンスの止めるのも聞かず、危険を冒して個人的に彼らとデートしエリンの消息を求めていく。同時に読者はチャーリーとは何者かという推理を楽しめる。緻密に構成され丹念に描かれたサスペンス小説の秀作として推薦する。

良くできてはいると思うけど仕事がらダンスをこのように扱われると興味も半減以上だ。


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