三つの棺
著作名
三つの棺
著者
ジョン・ディクスン・カー
ジャンル
本格推理
星の数
★★★
出版社
ハヤカワ文庫
原作出版
1935
備考

第一の棺 学者の書斎の問題
  グリモー教授が酒場で、早すぎた埋葬について話しているとき、いつのまにか見知らぬ男が入りこんで来ていた。
「人間が棺から出る。わたしはそれをやったんですよ。だが、弟はそれ以上のことをやれる。弟はあなたの命をとりたいと思っている」
男の出した名刺には、奇術師ピエール・フレイと書いてあった。
身を守る用心をしたほうがいい、という人々に、教授は不思議な答えをした。
「ああ、わたしは絵を一枚買うつもりだ」
そして、彼は立木と墓石の描かれた巨大な絵を買って自分の部屋に置いたのだ。
土曜の夜は雪になった。フェル博士とハドレイ警視が教授の家に行ってみると、謎の人物が来ているという。内側から鍵のかけられたドアが、ようやく突き破られたとき、なかには血まみれのグリモー教授がいるだけだった。
教授の部屋から“目を放さないで”いた目撃者のミルズはこう証言した。
「教授は訪問者を見て『あんたは誰なんだね?』といいました。その見知らぬ男は、ひどくすばやい動きで、さっとドアの中に飛び込みました」
だが窓べりにも窓の外にも雪の乱れは全くなかった。仮面をかぶってやってきたという男は、文字通り、消え失せたのである。

第二の棺 カリオストロ街の問題
  ハドレイ警視は、フレイを連れてくるよう警官をさしむけた。だが、彼もまた殺されていた。現場はグリモーの家から三分もかからぬカリオストロ街の袋小路。新聞には<魔術で殺された魔術師>として次のように報じられていた。

――この街の突き当たり近くに来ていた人と、その入り口にさしかかった巡回中の巡査が「二発目はおまえだ」という言葉と銃声を聞き、目をやると、通りの真中で男がよろけ、うつむけに倒れた。あたりに人影はなく、雪の上には全然足跡がついていなかった。そして、驚くべきことに、銃撃はごく近距離から行われたものであり、その角度は自殺では不可能なものだったのである。


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