もっとも危険なゲーム
著作名
もっとも危険なゲーム
著者
ギャビン・ライアル
ジャンル
冒険小説
星の数
★★★★
出版社
ハヤカワ文庫
原作出版
1964
備考

対決の地はソ連国境にもほど近いフィンランドの山中。古びた12番径のショットガンを構えるビル・ケアリは、元英国秘密機関員の過去がある、言うなれば人殺しのプロだった。一方アメリカ人の富豪フレデリック・ウェルズ・ホーマーは、パーディーの.300マグナム高性能ライフルを愛用し、これまであらゆる危険な動物と対決しながら、世界の主な猟場を巡ってきた狩猟のプロである。

まず小手調べには、水辺から30ヤードの距離に放った枯れ木である。ここでケアリはなんと西部劇でおなじみの、「日暮れまでに町を出ろと言っといたろう」という懐かしの台詞を引っ張りだしてきて、的を射つ。けれども銃口が跳ね上がることに気をとられ過ぎたケアリの散弾は、標的を大きく外してしまった。しかし見物していたホーマーは、彼の距離の取り方を見て、ケアリに射撃の経験が豊富なことを見抜く。お次はホーマーの番だ。彼はケアリのショットガンを借り、空中に投げ上げたあき罐を、しごくあっさりした射撃スタイルでこともなげに射ち落とした。

ホーマーの腕前をもっと見たくなったケアリは、彼の銃を取り出すように言う。今度は空中の空き罐を、一発玉のライフルで射たせてみようというのである。これは映画のように簡単にはいかない。しかもケアリが散弾でぶっ飛ばして急に方向をかえたのを、一発玉で狙うのである。そんな名人は百万人に一人いるかいないかだ。だが無表情にボルトを一往復させたホーマーは、ケアリが空中で射った罐を本の半秒ほど追跡して射ち当てた。まさに百万人に一人である。しかし、とっさに銃を肩から腰に移したケアリは、見事な腰だめで、そのあき罐を射止めた! 顔を見合わせて笑いあう二人。「あんなすばらしい腰だめは初めて拝見しました」「パーティー用のトリックですよ」そんな会話をかわすうちホーマーは、ケアリがかつてどんな危険なパーティーに参加していたか気付いてしまったようだ

さあ、いよいよ<最も危険なゲーム>が、あと一つだけ残っている。

<危険な獲物を狙う真の妙味は、できるだけ近くへ行くことにある>

獲物は銃をもった人間だ!

<これから先は、スポーツマンらしく正々と技を競い合おうではないか。彼は猛獣狩で鍛えた腕で、おれは軍隊の訓練と実戦の経験で>

銃の腕前は、まず五分といってよい。

あとは、人を殺したことのある経験を持つ男と、全ての獲物を仕止めてきた末に、ついには、 “強力な反撃力のある、もっとも危険な獲物(ゲーム)、人間”しか狙うものが残されていない男の対決だ。


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