ママに捧げる犯罪
著作名
ママに捧げる犯罪
著者
ヘンリイ・スレッサー
ジャンル
ミステリ短篇
星の数
★★★
出版社
ハヤカワポケミス
原作出版
1962
備考

「アミオン神父の大穴」
ネズミを飼っておく余裕もない貧乏な教会の神父さんが、献金箱に十ドル紙幣を発見するのが、この心あたたまるストーリイの発端。自分の説教のききめかと喜んだが、さにあらず、献金者は競馬狂。せっぱつまって神さまにお祈りをしたところ、八回のうち六回的中、これこそ競馬の神とばかりにお礼の意味で献金したというわけ。
その後、男は何度も献金しにやってくる。ついに神父は、教会の財政面立て直しをもくろみ、男に教会の金を渡して賭けてくれるように頼んでしまう。やがて正気にもどった神父さんは、せめて……と、賭けた馬が負けるように祈る。
ところがレース後、例の競馬狂が二千百ドルを持ってきて神父に渡します。さては祈りもとどかなかったかと、おのれの信心の浅さを悔やんだとき、男はいった。
「あっしは本命馬の優勝に賭けたんだが、どういうわけかゴール寸前ガックリきちまいましてね。でも神父さんの大切な金だけは、確実を期すということで、入賞に賭けたんです。それで負けたとはいえ、配当金がついたんでさあ」
すってんてんになった男は、教会から出てゆくとき、ポケットから最後の二ドルを献金箱に入れていった。

「母なればこそ」
船乗りとの一夜の契りで生まれたアイリーンを7年前に養女にやってからというもの、ロティ・ミードの生活は荒れすさんでいく一方だった。
娘にひとめ会いたいし、お金もほしい、とそう思ったとき、ロティの心には魔が射したのだった―― いまは養父母のもとでかわいがられているアイリーンを誘拐してやろう。
たとえバレても実子なのだから電気椅子に座らされることもないだろう……だが、運命はロティに味方しなかった。
どこをどう間違えたか、誘拐したはずの女の子は、アイリーンではなくマーガレットと名乗ったのである!

血のつながりを信じたがゆえの悲劇を描いた「母なればこそ」ほか、おもわずホロリとさせる珠玉の短篇15篇を収録。
  ママをはじめ、家族の方々に捧げる美しく、悲しく、そして皮肉な犯罪の物語!


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