バスカヴィル家の犬
著作名
バスカヴィル家の犬
著者
コナン・ドイル
ジャンル
本格推理
星の数
★★★★★
出版社
各社文庫あり
原作出版
1902
備考

この作品は、シャーロック・ホームズがライヘンバッハの滝に落ち、読者の前から姿を消して8年後に書かれたが、事件はホームズが消える前と設定されている。
しかし「この事件のホームズの活躍は見事なものですが、彼が生きて再びベイカー街のもとの部屋に戻ってくるまでは、わたしはほんとうの幸福感に浸れないのです……」
彼らはホームズの生還をこのあとさらに2年待たねばならなかったのだ。

西部イングランドの陰鬱な沼沢地ダートムアに館を構えるバスカヴィル家には、17世紀から伝わる魔犬の言い伝えがあった。

当時の残虐だった主が悪業のため地獄の魔犬に咬み殺され、その祟りは代々の主に及ぶ、だから夜に沼沢地に出てはいけない、というのだ。

ホームズを訪ねてきたモーティマー医師は語る。親しくしていた当主チャールズ・バスカヴィル卿が3ヶ月前のある夜、いつもの散歩に出て戻らなかった。召使が探してみると、沼沢地へ通じる小門を通り過ぎた辺りで、苦悶の跡を顔に刻んで亡くなっていた。解剖の結果は「他殺に非ず」だったが、医師は近くに巨大な犬の足跡を発見しており、沼沢地でぼうっと青く光る伝説の魔犬を目撃したという村人もいるという。

モーティマーは、遺産相続人のヘンリ卿がカナダから帰ってきているが、果たして何が待ち受けるかわからない館へ連れていくべきか否か、とホームズに相談をもちかけた。翌朝ホームズはヘンリ卿に会ったが、ロンドンに着いたばかりなのに「命を惜しむなら沼沢地に近づくな」という脅迫状が届いたり、2回も靴の片方ばかりが盗まれたりと怪事が続いたという。
ヘンリ卿の身を案じたホームズは、自分は多忙なので、ワトスンに卿と一緒に行って護衛するよう頼んだ。

バスカヴィル館に着いたワトスンは、深夜女のすすり泣きを耳にする。召使バリモアは知らないと答えるが、それは彼の妻の声に間違いない。彼らは何か秘密を持っている。

散歩に出かけたワトスンは近くに住む博物学者のステイプルトンに会い、お茶に呼ばれた。ところが彼の妹のベリルは、ワトスンをヘンリ卿と思い込み、「ロンドンへお帰りになって」と忠告した。その後、卿もこの兄妹と知り合うが、彼はこの美しい女性に恋心を抱いたらしい。またそれに気付いたステイプルトンは、二人が親しくなるのを阻害しようとした。

深夜バリモアが館から沼沢地へ蝋燭で合図を送っているところを取りおさえ、問い糺すと妻の弟で脱獄囚のセルデンを匿っていると白状した。卿とワトスンはセルデンを捕らえに行くが失敗してしまう。

このとき、ワトスンは岩山の上に月光を背に佇む別の男の姿を認めた。
ワトスンは、チャールズが死亡した日にある婦人から手紙を受け取っていたことを、バリモアから聞き、頭文字を頼りにその婦人を突きとめる。婦人は卿の亡くなった時刻、場所で会いたいと書き送ったことを認めたが、そこへは行かなかったと述べた。

その帰路沼沢地で叫び声と吠え声を耳にしたワトスンが駈け付けると、見覚えのある服を着た男が血に染まりこと切れていた。「ヘンリ卿!」ワトスンは思わず駆け寄った。


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