カチャッ……。
手垢にまみれたニコンが、腰に構えたライフルM16を発射しながら開拓地を全力疾走する黒人軍曹の姿を写し撮った。
カチャッ……。
次の写真には、黒人軍曹は何処かに潜むマシーンガンからの弾丸の糸で操られたマリオネットのように、くるくる回っていた。
死の谷が彼の故郷と言われる、“戦場での伝説の男”カメラマン・マンガー。
それほどの男をリタイアさせ、心のシャッターさえも完全に閉じさせた“最後の偵察行”における少女の目とは?母とは?
彼に復帰を決意させる“引金”となるでぶっちょスパイの元締めウォールター。
いつのまにか、マンガーを愛する未亡人ルース。
ルースを“命”と想う、イスラエル空軍最高のパイロット、ギデオン。
美しくはあるがサディスト・スパイ・ジャニーヌ――人それぞれの運命を、哀しさをじっくり読ませながら、話しはクライマックスに。