友よ、戦いの果てに
著作名
友よ、戦いの果てに
著者
ジェイムズ・クラムリー
ジャンル
ハードボイルド
星の数
★★★★
出版社
早川書房
原作出版
1993
備考
海外ミステリ全カタログより

モンタナ州メリウェザーの私立探偵C・W・シュグルーは仕事の依頼もなく、暇な毎日だ。そこでアルバイト仕事にバーテンダーをやっている。ある日、店のレンタル・ジュークボックスに入っている自分好みのハンク・スノウのレコードが取り外されることを聞いたシュグルーはジュークボックスを運び出し、貨物列車の前に投げ捨てた。運行に支障を来した鉄道会社から莫大な補償金を請求され、無一文になってしまう。

そんなある日、友人の弁護士から仕事を紹介された。総額五千ドルの熱帯魚の代金を支払わないバイク族<スノードリフターズ>の首領、ノーマンから代金を取り戻してほしいというのだ。取立てをめぐってバイク族と派手な銃撃戦をしたあと、シュグルーはノーマンと親しくなり、今度はノーマンから仕事を依頼されるようになる。

近々同じバイク族の女性と結婚式を挙げる予定のノーマンは母親に出席してもらいたいのだが、その母はノーマンが六歳の時に家出をし、その後一度も会っていないという。彼女はメキシコの名家の出身で今なお美貌を保ち、ある大物実業家の妻となっているらしい。シュグルーはこの母親を捜すために車を運転しモンタナからニューメキシコ州まで長旅に出る。だが彼の背後にFBIやメキシコ人ギャングがつきまとってきた……。

本書は『さらば甘き口づけ』から十五年後に発表された続編で四十代後半になった主人公はいまだにヴェトナム戦争の心の傷を引きずっている。前作同様モンタナからアメリカ中西部を走り回るロード・ノヴェルでアメリカの雄大な自然に対峙する、生き方を変えられない主人公を軸に物語りは進んでいく。本書はロード・ノヴェルの名作、ジャック・ケラワックの『路上』のように移り過ぎていく景色と登場人物を対比させ作者のメッセージを伝える秀作だ。

前作は本国で刊行されてからやっと十年後に翻訳され、本書も原書刊行から三年後にようやく邦訳された作品だが、あまりにも寡作でファンは待ちくたびれてしまう。


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