シンプル・プラン
著作名
シンプル・プラン
著者
スコット・B.スミス
ジャンル
ミステリ
星の数
★★★
出版社
扶桑社ミステリー
原作出版
1994
備考
海外ミステリ全カタログより

オハイオ州北部の片田舎に住むハンクは弁護士志望であったが学力が伴わず、今は田舎町の飼料店のアシスタント・マネジャー兼会計士をしている。新婚の妻サラと、平凡ながら平和な毎日を送っていた。ハンクの両親が車で事故死してから八年後、兄のジェイコブ、兄の友人のルーと三人で両親の墓参りに出かけた日に運命の歯車が大きく狂い始める。

大雪の中、車で出かけた三人は野生の狐に遭遇。狐を追って飛び出した兄の愛犬を探しに公園の奥に入り込んだ時、墜落した単発の小型飛行機を発見した。機内のコクピットに男の死体があり、死体のかたわらに100ドル紙幣のいっぱい詰まったバッグが転がっていた。相談の結果、ハンクが六ヶ月間現金を保管し、ほとぼりのさめるのを待って三人で山分けすることになった。バッグを調べてみるとすべて100ドル紙幣で440万ドルあった。

後日、機内にルーの飲み残したコーラの缶や自分たちの指紋を残してきたことに気づき、ハンクは兄とともに証拠を消すために再び遭難機に忍び込んだ。その帰途、近所の農場主に出会ってしまう。動転した兄のジェイコブはこの農場主を殴りつけ、瀕死の重傷を負わせてしまった。やむなくハンクは口を封じるため農場主の口をマフラーで押さえつけ、とどめをさす。死体をスノー・モービルとともに川に投げ入れて、農場主が転落して事故死したように装った。

定職を持たない飲酒癖のある兄とギャンブルの借金で首の回らないルーはたびたびハンクを訪れ、分け前を早く欲しいとせがんでくるようになってきた。しかしハンクは今、大金を使うのは危険だと断り続けた。ある日、ルーの家でハンク、兄のジェイコブの三人で話し合ってるうち激怒したルーはハンクに銃を向けた。これを見たジェイコブは弟、ハンクを助けようとルーを射殺。ハンクは居合わせたルーのガールフレンドを成り行き上、殺してしまう羽目になる。後日、遭難機は大富豪の令嬢を誘拐した犯人のうちの一人が身代金もろとも墜落したものと判明した。ハンクはこの誘拐犯人からも狙われることになる。

本書は若干二十八歳のスコット・スミスのデビュー作。プロットも単純で意外性や謎解きの楽しみは薄いが、オハイオ州北部の片田舎で平凡に暮らす新婚の男が、ちょっとしたきっかけから、次から次へと自分の意思とは別に深みにはまっていく過程を怖いほどに見事に描いている。577ページの長さを感じさせず、一気に読ませてしまう筆力は相当なもの。小説の中の物語が我々の日常生活でも起こりうるのではないかという臨場感、恐怖感はすごい。米国はもとより世界10ヶ国以上でベストセラーになったこともうなずける。1994年屈指の傑作である。

スティーヴン・キングが激賞した傑作サスペンスとあるが、激賞したとまでは思えなかったです。


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