酔いどれの誇り
著作名
酔いどれの誇り
著者
ジェイムズ・クラムリー
ジャンル
ハードボイルド
星の数
★★★★
出版社
ハヤカワ文庫
原作出版
1975
備考

ヘレン・ダフィは、何もかもがまだ素晴らしかった時代からやって来た女のように思われた。酔っぱらって本当のやつを忘れてしまう時に心の中をよぎる、実際はありもしなかったほのぼのとした少年時代を懐かしく思い出させてくれた……

酒びたりの私立探偵ミロは、没落した名家の生まれで、父親の遺産が手に入る日を待っている身。離婚経験は二回。ある日、事務所を訪れた大学教師のヘレンに強く心惹かれる。彼女の依頼は、ここメリウェザーの街に西部史の研究に来て消息がとだえた弟の行方を捜してほしい、というものだった。偶然、ミロの飲み仲間の一人がその若者を覚えていたが、弟をほめそやしていたヘレンの話とはかなり違う生活ぶりだった。ホモセクシュアルの男たちと暮し、自堕落な日々を送っていたという。メリウェザーのような地方の小都市に流れこみ、コミューンを作って麻薬にふける青年たちの一人だったのだろうか? ヘレンのために、ミロは荒廃した街の中へ単身踏みこんでゆくが……やがて弟は、ある酒場で麻薬を射ちすぎた死体となって発見された!

「法律ほどあてにならない代物はない。
時代と人の好みで変わってしまう。
ここ八十年近く、この州で離婚したいと思ったら、配偶者が重罪の宣告を受けるか、不義密通の現場を押さえるか、それくらいしか手がなかった」。これが書き出し。
巻末は「西方の尾根の鋭い影が小川のほとりに黒々と迫っていた。
私は腰をおろし、走り去る車の音に耳を傾けた。
そしてビールを飲み、彼女をゆるした」と結ぶ。

こんな文章に興味をそそられたら、ぜひ読んで欲しい、ハードボイルドの絶品。
他に「さらば甘き口づけ」「ダンシング・ベア」「友よ戦いの果てに」いずれも絶品としか言いようがない。


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