ロセンデール家の嵐
著作名
ロセンデール家の嵐
著者
バーナード・コーンウェル
ジャンル
冒険小説
星の数
★★★★
出版社
ハヤカワ文庫
原作出版
1989
備考

ジョン・フレデリック・アルバート・ロセンデールは伯爵という身分と、フランスで建造された全長38フィートのカッター(一本マストの小型帆船)を所有している。
長ったらしい彼の名前も、愛称でいえばごく簡単でジョニーですんでしまう。
彼はロセンデール家の美邸ストウィにちなみ、ストウィ伯爵とも呼ばれている。
とはいえジョニーは、いささか厄介事を抱え込み、優雅な貴族生活を送っているような場合ではなかった。
彼は一種の世捨て人であり、ヨットで海を放浪し、二度とイングランドには戻らない誓いを立てていた。
そのジョニーが誓いを破り、陸に上がった。
一家の弁護士から母親の危篤の知らせを受けたからである。
この病床の母親の最後の言葉が凄い、「この、ろくでなし」と、ひとこと残し永眠してしまう。
ジョニーにしても母の死に一適の涙さえ流さないのだから、いい勝負ではある。
この憎悪に満ちた家族関係は、ロセンデール家の財政の破綻を支えるはずだった、 4百万ポンド相当の絵が盗まれたことが原因になっている。
精巧な警報装置で補強された中世の要塞から忽然と消えてしまった、ゴッホの名画「ひまわり」がそれである。
犯罪の嫌疑がジョニーにかけられた。
絵を置いてあった部屋と警報装置の鍵を持っていたのは彼だけだし、ドアのプレートに指紋も残っていた。
財政源を失いストウィ邸は売却され、ロセンデール家は破滅した。
残ったのは崩壊の元凶ジョニーへの、一族と肉親からの憎悪というわけだ。


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