女王陛下のユリシーズ号
著作名
女王陛下のユリシーズ号
著者
アリステア・マクリーン
ジャンル
冒険小説
星の数
★★★★★
出版社
ハヤカワ文庫
原作出版
1955
備考

時代は1942年から43年。ナチスドイツの侵入によって各地で苦戦を続けるソ連軍を助けるため、連合軍は大船団による武器・食糧の輸送を敢行する。

この物語の主人公は、救援物資を満載してソ連の不凍港ムルマンスクへ向かう船団の護衛に当たる英国海軍の巡洋艦「ユリシーズ号」五千五百トンと、胸を侵され血を吐きつつ艦橋に立つヴァレリー艦長以下七百数十名の乗組員たちである。

厳冬の月曜日、0060、「ユリシーズ号」は、第十四空母船隊の旗艦として十三隻の艦艇を従えてひっそりと停泊地を離れる。任務は、カナダからやってくる第三次援ソ高速輸送船団十八隻の護衛である。だが乗組員たちは、先の北極海の二度の航海で疲弊しきっていた。

「ユリシーズ号」の第一の敵は酷寒である。北極の海は零下三十度、甲板に飛び散った海水は瞬時にして氷結し、艦に数百トンの重みが加わる。第二の敵がドイツの敷設した浮遊機雷。出航したその夜、空母一隻が触雷し引き揚げる。

次が、海の男たちがかつて経験したことのない大暴風だった。人知をこえた海のねじれ、巨大なビルのような波が、「ユリシーズ号」を直撃する。

水曜日1030、予定時刻に第十四空母船隊はアイスランド沖で輸送船団と合流する。戦車、戦闘機、ガソリンを満載した十八隻の船隊である。任務は開始されたのだ。

第四の敵、これこそが本物の敵である。海面下にひしめくUボート、ノルウェーの基地から飛来するドイツ空軍の重爆と急降下爆撃機。空母一隻が雷撃され沈没する。火の海の上で最敬礼して死んでいく乗組員たちを目のあたりにして、「ユリシーズ号」の乗組員は号泣する。

木曜、金曜、そして土曜――間断ないドイツ空軍と海軍の攻撃。空母部隊はドイツ軍に大打撃を与えながら自らも深手を負う。

出発前三十二隻の艦船が今や残るは七隻を数えるのみ。大破した「ユリシーズ号」の艦橋でヴァレリー艦長は病のため、ついに息を引きとる。「彼ら(ユリシーズ号乗組員)こそおよそ神が一艦長に与えた最高の乗組員だ」との言葉を遺して。

そして日曜朝、大破した「ユリシーズ号」は、敵巡洋艦に体当たりすべく、四十ノットの最大速力で突撃していくのだった……。


巡洋艦

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