鷲は舞い降りた
著作名
鷲は舞い降りた
著者
ジャック・ヒギンズ
ジャンル
冒険小説
星の数
★★★★★
出版社
ハヤカワ文庫
原作出版
1975
備考

1943年、連合軍に捕らわれていたムッソリーニが、ドイツ特殊部隊長スコルツェニイの空挺作戦によって奇跡的に救出された。ヒトラーは狂喜し、同様の奇襲によってイギリス首相ウィンストン・チャーチルを誘拐することを思いついた。折しも、スタドリ・コンスタブル村に、チャーチルがひそかに静養にやってくるという情報が、ドイツ側工作員である老婦人ジョウアナ・グレイから寄せられる。

千載一遇のチャンス――この危険きわまりない任務に選ばれたのが、落下傘部隊の歴戦の勇士でありながら、上層部にうとまれ、死刑同然の特殊作戦に従事させられているクルト・シュタイナ中佐であった。 SS長官のヒムラーの言葉によれば「非常に頭がよくて、勇気があって、冷静で、卓越した軍人――そして、ロマンティックな愚か者だ」

一方、スタドリ・コンスタブルで準備工作を進めるジョウアナを助けるために、ドイツ軍はリーアム・デヴリンというアイルランド人を送り込んだ。 IRAの闘士であるデヴリンは、負傷した退役軍人というふれこみで村に住みこむ。そしてついに、決行の夜が来た。嵐をついてイギリス軍用機に偽装したダグラスDC3がノーフォークの海岸に進入、シュタイナと14名の落下傘兵が次々と飛び降りた。 浜では、ジョウアナとデヴリンが霧の中で標識燈を灯しながら、今か今かと待っていた。 ――やがて、ベルリンのヒムラーのもとに報告が入った。

降下成功と作戦始動を伝える劇的な電文、(鷲は舞い降りた)……!

シュタイナは、テラスの踏み段をゆっくりと上がっていった。上等の葉巻のかおりが夜気に漂っていた。上りきった時、踏み段が砂利の上でずれて、音をたてた。首相がサッと振り向いて、彼を見た。
葉巻を口からとって、いつもの冷然とした表情のまま、いった。「ドイツ落下傘部隊のクルト・シュタイナ中佐と見うけたが?」
「ミスター・チャーチル」シュタイナが一瞬、口ごもった。「意に反することではありますが、私は任務を果さなければなりません」
「それなら、なぜためらっているのだ」
首相が落ち着いた口ぶりで言った。


DC3

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