摩天楼の身代金
著作名
摩天楼の身代金
著者
リチャード・ジェサップ
ジャンル
ミステリ
星の数
★★★
出版社
文春文庫
原作出版
1983
備考

“世界一安全”といわれる超高層豪華マンション、セントシアー・タワー。
ニューヨークのど真ん中にオープンしたこのビルを人質に400万ドルの大金を奪い取ろうとした男がいた。
男の名はトニオ・ヴェガ、ヴェトナム戦争帰還兵。
天才的頭脳、不屈の忍耐力、俊敏な行動力を併せ持つ男。
彼はヴェトコンの捕虜となっている双子の弟を救出するために、2年がかりでこの犯罪を計画してきたのだ。
厳重な警備態勢をかわしてビル内に置かれた脅迫状に、驚き戸惑う警備陣。
だがそれは始まりにすぎなかった。彼はビル内に仕掛けた爆弾をわざわざ発見させ、いつでもビルを爆破できることを彼らに思い知らせたのだ。
一歩一歩着実に緻密に計画を実行して行くヴェガ。
だが捜査陣も手をこまねいているだけではなく徐々に犯人を絞り込んでいく。
息が詰まる攻防の中、身代金受け取りのために彼が告げたのは、捜査陣の誰一人として予想しなかった要求であった。

内藤陳のお薦め文
  ベトナムの戦場で“殺人兵器”という言葉が使われたならば、それは彼のことだった。尋問相手の心理を心得ている点で最高、エレクトロニクスと通信に精通、おまけに爆発物にかけては文字通り悪魔的ともいえるエキスパートだった。そのために、適ベトコンから授けられた“勲章”は、なんと西部劇もどきの手配書――生死を問わず、賞金1万ドル――である。

だが、そのことが、彼の双子(ソックリ)の弟を窮地に追いこむ。北ベトナム政府軍は、捕えた弟を、彼だと信じて疑わなかったのである。だから終戦を迎えても、弟は帰還を許されず捕虜のまま死を待つだけ――。

しかし、唯一の希望がもたらされた。身代金との交換だ。ただ額(カネ)が途方もない400万ドル!

ターゲットは決まった。そこに住むなら、全世界で最高の出費を覚悟しなければならない、マンハッタンにそびえ立つ超豪華絢爛たる100階建てのセントシア・タワーだ!

さて、その方法は……? 不可能に挑戦する彼の、大掛かりにして詳細緻密な計画・行動のスリリング・オドロキが陳の胸を撃つ!

難攻不落の警備陣もビビらせる心理的脅迫の積み重ねと、爆薬の猛威に、支配人はつぶやいた。

「まるで街の中の戦争だ」

さあ、君も挑戦してみるか? スッゴイゾオ、さしもの陳メもアッと驚いた、身代金の受け取り方法がまた最高! ビッグAのワン‐プラス‐ワン‐プラス‐ワンとは?

加えて舞台である――無情(ドライ)にして酷薄(キケン)。誰もかれもが孤独だけれど、ホンノリ灯(とも)るクリスマス・ソングと愛情物語――ニューヨークの描写にもまた唸り、洒落たラストの一言に思わずニヤリとくるはずだ。

「さあ読め!」と思わず脅迫口調の陳メだが、世界でもっとも不幸な“犯罪”は、本書を読まずに死ぬことだよ。


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